猫とネコとふたつの本棚>同居の工夫>猫に食べさせてはいけないもの
猫が食べてはいけないもの・注意すべきもの
猫に食べさせてはいけないものと、
食べさせるときに注意すべきものを列挙します。
これらのうち、少量なら、あるいは加熱するなど少し手を加えれば、
猫の体にとってむしろ有益な食品も多いのです。
良いものをバランスよく食べさせてあげてくださいね。
◆◆ネギ類【ダメ!】◆◆
ネギ科の植物全般=タマネギ、長ネギ、ニラ、ワケギ、らっきょう、アサツキ、ニンニク、など。
ネギ中毒=溶血性貧血をおこします。
ネギ類に含まれるアリルプロピルジスフィドという成分が
血液中のヘモグロビンを酸化し、赤血球にグロビンの不溶性変性産物を作ってしまいます。
これにより、赤血球が破壊され、溶血性貧血の原因となります。
同時に、血液をつくっている骨髄のはたらきも悪化します。
これは、血液中のヘモグロビンの分子構造が、ネコとヒトでは異なるために起こる症状です。
ネギ中毒をおこすと、血色素尿(赤〜褐色の尿)が出る、元気がなくなる、嘔吐、
心臓の鼓動が速くなる、
ふらつく、黄疸、下痢などの症状があらわれます。
多くの場合は自然治癒しますが、幼猫・高齢猫や、体質・体調によっては
重度の貧血状態に陥ったり、死亡することもありますので、要注意です。
アリルプロピルジスフィドの効力は加熱しても落ちません。
タマネギはハンバーグ・コロッケ・サラダ・シチューなどの多くの洋食に、
また長ネギはみそ汁や煮物・すき焼きなど多くの和食に使われています。
愛猫が食べないよう、気をつけてください。
*一部の獣医師の中には
「少々のタマネギを食べたってどうってことない!大丈夫や!」
という人がいますし、実際、毎日タマネギを1〜2個食べて平気な犬もいるようです。
が、
個体差が大きく、中毒をおこしやすい子はタマネギスープを一舐めしただけで
動物病院へかつぎ込まれることもあるそうです。
また拙サイトの掲示板にも、実際にあった話として、
高齢猫がプランターのネギを食べて死亡したという
報告例がありました。
どの猫本にもネギ類は危険と書いてありますし、
やはりネギ類は注意するに越したことはないと私は思います。
◆◆イカ、タコ【加熱して!】◆◆
昔から「猫がイカを食べると腰を抜かす」と言われてきました。
その理由は、
生のイカに含まれるチアミナーゼという酵素が、
ビタミンB1(チアミン)を分解し、急性ビタミンB1欠乏症を引き起こす場合があるからです。
ビタミンB1欠乏症の初期段階では、食欲低下・嘔吐が、
さらに進むと、瞳孔が開き、歩き方がフラフラになります。
症状が重くなると、痙攣をおこす・異常な姿勢をとったり大声で鳴き続けるなどが見られ
ついには昏睡状態に陥り死亡してしまいます。
チアミナーゼはイカだけでなく、生の魚介類の多くに含まれていますから、
与えすぎにはご注意ください。
なお、チアミナーゼは加熱すれば効力を失います。
それ以外にも、イカやタコは消化が悪く、嘔吐や下痢・便秘の原因となる場合があります。
スルメは水を含むと数倍に膨らみますから、食べ過ぎると
急性胃拡張等をおこす危険がある、と書いてある本もあります。
また、イカやタコはコレステロール値が高いのも注意すべき点です。
が、多くの猫がイカやタコを好みますし、
猫の必須栄養素であるタウリンを多く含んでいるという長所もあります。
与えるときは加熱して、人間が量をコントロールしながら与えるのがよいでしょう
。
◆◆アワビ【要注意!】◆◆
「猫がアワビを食べると耳が落ちる」と言われます。
これも根拠のある言い伝えなのです。
アワビの内臓に多く含まれるピロフェオホルバイドaなどの光励起物質が
猫の体内に吸収されると、光線過敏症の原因となります。
猫は全身を毛で覆われているおかげで、直射日光をあびても
猫の皮膚までは光が届きにくいのですが、その中で、
猫の耳は毛が薄いため、日光が皮膚からさらに毛細血痕まで届いてしまうのです。
そのため、耳が
光線過敏症をおこして激しい痒みが生じ、
猫は耳を掻きむしってしまいます。
さらに、有害成分によって耳の組織が壊死するということもあります。
2〜5月頃のアワビの内臓には特に注意です。
◆◆青身の魚【偏食はダメ!】◆◆
アジ、イワシ、サバなど。
不飽和脂肪酸という成分により、青身の魚を過食すると、
猫の脂肪が酸化して 黄色脂肪症(イエローファット)になります。
この病気になると、
猫の腹部や胸部、腹腔内などの皮下脂肪が
酸化・変性して炎症をおこします。
猫にとっては、お腹から胸にかけて、痛みと熱をともなう硬いしこりが
できるので、普通に歩けなくなったり、さわられるのをいやがったりします。
ところで、不飽和脂肪酸は少量であれば猫にとって有益な成分です。
あのDHAも不飽和脂肪酸の一種です。
バランスの良い食事を心がけてください。
◆◆生卵の白身【加熱して!】◆◆
生卵の白身には、ビタミンの一種であるビオチンを分解する成分アビジンが含まれ、
大量に食すると皮膚炎や結膜炎などを引き起こす可能性があります。
ただしこれは、加熱すれば大丈夫です。
卵は良質なタンパク源ですし、猫の尿を酸性化するメチオニンも含まれています。
ゆで卵やスクランブルドエッグにして与えてください。
◆◆練りもの【偏食はダメ!】◆◆
かまぼこ、ハンペン、ちくわなど。
添加物が含まれているため、与えすぎないように注意しましょう。
また、猫は人や犬と比べても大量のビタミンB1を必要とする動物ですが、
ビタミンB1は水に溶けやすく熱にも弱く、ちくわやカマボコのような
加工食品ばかりを偏食するとビタミンB1欠乏症になる可能性があります。
◆◆レバー【偏食はダメ!】◆◆
ビタミンAやB群が豊富で、猫にとって良い食材のひとつです。
が、あまりに与えすぎると、ビタミンA過剰症を引き起こし、
骨が変形したり、骨どうしが正常に連結しなくなってしまいます。
重症になると、自分で毛繕いができなくなり、ついには起きあがれなくなります。
要は偏食させるなということですね。
◆◆牛乳【注意!】◆◆
牛乳に含まれる乳糖をうまく分解するには、ラクターゼという酵素が必要ですが、
猫によってはこの酵素が十分にないため、乳糖を消化できず、
下痢や軟便をおこす子がいます。
そのような猫には、猫用ミルクを与えましょう。
また乳製品のチーズやバターは、塩分がけっこう含まれているものが多いのです。
注意して与えてください。
◆◆魚や鶏の骨【ダメ!】◆◆
猫の喉や消化器官はとても細いのです。
大きな骨は喉に詰まって窒息したり、消化器官に詰まって
腸閉塞を引き起こす可能性があります。
魚の鋭い骨や、砕けやすいトリの骨は、突き刺さりやすく危険です。
万が一刺さっても、猫は「骨が喉に刺さったの」なんて説明してはくれません。
骨はきれいに取り除いてから与えるようにしましょう。
◆◆豚肉【加熱して!】◆◆
人畜共通感染症のひとつに、トキソプラズマ症という病気があります。
健康な大人や成猫が感染しても、ほとんど症状が出ない場合が多いのですが、
それだけに感染に気づかない人が多く、日本でも、つい近年までは
成人の30%が感染していたといわれたほど、ありふれた病気です。
ですが、妊娠中の女性が初感染すると、胎児に重篤な症状がでる場合があります。
また免疫機能が弱っている人や幼猫が感染しても症状が出、最悪死に至ります。
豚肉は、このトキソプラズマの感染源となるシストの保有率が、他の肉類より高いのです。
シストが含まれた生肉を猫が食べると感染する可能性があり、その猫の排泄物を
人間がなんらかの理由で口にすると、人間も感染する可能性があります。
ただし、シストは熱に弱く、加熱すれば死滅します。
妊娠する可能性のある女性のいるご家庭で、猫さんに手作り食を与える場合は、
特に輸入豚肉は必ずよく加熱してから与えましょう。
*トキソプラズマについての詳細はこちらに書いています。
→猫と赤ちゃんは仲良しこよし>トキソプラズマ症と猫と妊婦
◆◆チョコレート・ココア【ダメ!】◆◆
カカオマスに含まれるテオブロミンという物質は、心臓や中枢神経系を刺激し、
下痢や吐き気、血圧上昇、不整脈、興奮、痙攣などの症状を引き起こします。
重症の場合は死亡することも。
[2012.9.25追記]
研究結果では、『特にてんかん症の犬に発作が多く、
体重1kgあたりテオブロミン88mg以上摂取すると死に至る』そうです。
(『動物病院119番』兵頭哲夫・柿川鮎子著、文春新書 p.64)
ただし、チョコレート製品によって、含まれるテオブロミンの量はかなり違うそうです。
どんなチョコレートでも88mg/1kg以上食べたら即死ぬという意味ではありません。
◆◆コーヒー、お茶【ダメ!】◆◆
コーヒーやお茶に含まれるカフェインは、強い興奮作用があります。
猫には与えない方がよいでしょう。
◆◆お菓子、甘いもの【要注意!】◆◆
糖分や脂肪分の過剰摂取となり、肥満の原因となります。
肥満は猫でもよくありません。
また、お菓子には、甘さを引き立たせるため、塩分も相当量ふくまれているものです。
塩分の過剰摂取にも注意が必要となります。
◆◆ぶどう(レーズン)【注意!】◆◆
ぶどう、または、レーズン(干しぶどう)を食べて
嘔吐、下痢、食欲不振、腹痛、腎不全などを起こした犬の症例が
2003年4月〜2004年4月の間に140件もアメリカで報告されたそうです。
そのうち、約50件は重症で、7件が死亡にいたったとのこと。
猫については医学的報告はまだ管理人は眼にしていませんが、
猫は犬より一般に解毒機能が弱いことを考えれば、注意すべきと思われます。
*参考HP(英語です)
Raisins and Grapes Can Be Toxic To Dogs
Tuesday, July 6, 2004
(ASPCA=The American Society For The Prevention Of Cruelty To Animals )
◆◆香辛料【ダメ!】◆◆
わさび、からし、胡椒、唐辛子など。
刺激の強い食品は、胃腸炎や内臓障害の原因になる可能性があります。
◆◆塩分の強いもの【要注意!】◆◆
塩鮭、ラーメン、ひもの、その他人間の食事全般。
塩分(ナトリウム)の過剰摂取は、心臓や腎臓に負担がかかります。
食パンにバターを塗っただけでも、猫には塩分過剰です。
ただし、猫は塩分が全く不要というわけではなく、ごく少量で良いということです。
猫は、全身で汗をかくヒトと違い、足の裏しか汗をかきません。
だから塩分もあまり失われないですむのです。
人間用の味付けでは塩分過剰になってしまいます。
◆◆アルコール類【ダメ!】◆◆
猫に酒などアルコール類を飲ませてはいけません!
ほんの少量でも、体の小さなネコにとっては、ヒトにとっての
一升瓶一気呑みくらいの量となるかもしれません。
肝臓の働き等も、ネコとヒトでは違います。
おもしろ半分に飲ませるなんてもってのほかです。
「吾輩は猫である」の名無し猫君も、最後は
ビールを飲んで甕に落ちて死んでしまうのです・・・
◆◆古くなったドライフード【注意!】◆◆
ほとんどのドライフードにはビタミンB1が添加されていますが、
古くなるとビタミンB1はこわれることがあります。
そのようなフードを食べ続けると、猫がビタミンB1欠乏症におちいる危険があります。
◆◆ドッグフード【要注意!】◆◆
犬と猫とでは、必要とする栄養素も、体内で合成できる栄養素も違います。
ドッグフードは、猫にとって十分な良質タンパク質も、
必須アミノ酸であるタウリンもまったく不足しています。
タウリン不足が続くと、進行性網膜萎縮をおこし、最後には失明します。
この病気でいちど網膜に障害が生じると、もう一生治りません。
視力に異常が出てからあわててタウリンを与えても、もとの視力には戻らないのです。
またタウリン不足は心筋症・神経の異常・生殖能力の低下なども引き起こします。
猫にはキャットフードを与えてください。
「なぜドッグフードじゃだめなの?犬も猫も肉食動物でしょ?
ドッグフードの方が安いのに」
と思った方のために、以下、『ペットフードの開発』本好茂一監修、より引用します。
『
猫は、吸収アミノ酸の分解と糖新生に関係する肝臓内酵素の活性が常に著しく高い。
犬やラットでも高タンパク食摂取時はそれらの活性が比較的高いが、
ラットのように雑食化した犬は、低タンパク食摂取時には貴重なアミノ酸が
無駄に分解されないよう、それらの酵素の活性を抑制できる。
しかし肉食動物であり続けた猫は、そのような適応能力を身につけなかった。
すなわち、猫では蛋白質摂取量に関係なくアミノ酸がエネルギー源や
糖新生に利用されるため、蛋白質要求量が高いのである。』(p.33)
猫はアミノ酸の代謝に関しても特異的なのだそうです。
その上、猫は犬よりミネラルやビタミンの要求量も多いとか。
詳細を知りたい方は、ぜひ本をお求め下さい。とても為になる本です。
◆◆その他、消化が悪いといわれる食品◆◆
マカデミアナッツ、ピーナッツ、キノコ、タケノコ、トウモロコシなど。
野菜類を大量に与えること(セルロースを消化できない)。
ワラビやゼンマイなど山菜類。
◆◆人間用の薬【ダメ!】◆◆
人間用の薬を安易に猫に与えることは厳禁です。
猫を治すどころか、下手すると死亡してしまいます。
愛猫を治したいなら動物病院へ。
素人療法はいけません。
猫が悪戯して食べないよう薬の保管法にもご注意ください。
こちらのページにもう少し詳しく解説しています。
→猫に危険な薬
*次のページもあわせてご覧ください。
→猫に危険な植物
◆◆参考文献◆◆
上記はいずれも下記文献を参考にまとめました。
ネットは便利ですが、信頼でき頼りになるのはやはり、何と言っても本でしょう。
いずれもお奨めの本ばかりです。機会があればぜひお読みください。
*「イヌ+ネコ家庭動物の医学大百科」
*「もっともくわしいネコの病気」 矢沢サイエンスオフィス編
*「ナチュラル派のためのネコに手づくりごはん」 須崎恭彦
*「猫こんなとき救急マニュアル100」 高野瀬順子
*「ペットフードの開発」 本好茂一監修
*「食べてはいけない!ペットフード大解剖2」 堺栄一郎
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