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【社説】

会計検査報告 無駄削らず増税ですか

 会計検査院が公表した国の二〇一二年度決算の検査報告は、税金の無駄遣いが一向に改善しない実態を明かした。財政危機だから消費税増税するのではないのか。これでは納税者の思いと違う。

 分厚い報告書が毎年、首相に提出されるが、いつになったら巨額の無駄遣いは改まるのか。「儀式」が繰り返されるだけなら、会計検査院は単なる「お飾り機関」で、その百五十億円規模の予算も無駄遣いになってしまう。

 報告書を受けた安倍晋三首相は、先月の消費税増税決定の会見で述べた「厳しい財政を再建するため、財源確保は待ったなしだ」との発言をよく思い出すべきだ。

 今回の検査で、税金の使い道などに問題があると指摘したのは六百三十件、金額は過去三番目に多い四千九百七億円に上った。四千億円を超えたのは、これで四年連続である。

 中身もお粗末といっていい。例えば、国土交通省などが実施した橋の耐震強化工事。橋脚を鉄筋コンクリートで覆う工法を採用したら、橋脚が重くなり逆に耐震性が落ちた。全国で十八件、国費計一億円が充てられた。

 厚生労働省所管の雇用調整助成金では、書類の未確認や担当の引き継ぎ不足により業者の不正受給が計十億円を超えていた。

 要するに、官僚は省益となる予算獲得には血道を上げるが、いざ使う段になると「効率的に」とか「厳正に」という意識が低すぎる。民間であれば、できるだけ少ない費用で最大限の効果を目指すのが当然だが、官にはその厳しさがない。

 相変わらず東日本大震災の復興事業でも「流用」や予算の「使い残し」など不適切さが後を絶たなかった。被災地の復興計画や住民間の合意形成の遅れ、建築資材の高騰・不足といった事情があったとしても、一一、一二年度に計上した復興費約二十兆円のうち、四分の一近くが使われていないことがわかった。

 それでも安倍政権は、一五年度までの復興費計十九兆円を二十五兆円にまで増やす計画である。必要な事業費の根拠も示さずに、先に金額ありきのようでは無駄を助長するだけである。

 国民の所得税には二十五年もの間、復興増税が課せられる。さらに来年四月からは消費税率も引き上げられる。官僚のでたらめともいえる予算消化がまかり通るようでは、何のための増税なのか。

 

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