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| (9時間34分前に更新) | ||
国会審議を通して見えてきたのは、やはりこの法案の持つ危うさである。
機密を漏らした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案を審議している衆院国家安全保障特別委員会で、担当閣僚の答弁が揺れ、閣僚間の意見が食い違うなど、法案成立を急ぐ政権の拙速さが目立っている。
法案を担当する森雅子内閣府特命担当相は、特別委の審議で「法案成立後も改善を尽くす努力と説明を果たしたい」と、成立後の見直しに言及した。これでは自ら法案に不備があることを認めたようなものだ。当初の制度設計に問題点があったことを厳しく問われて当然だ。
「特定秘密」指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置には「謙虚に受け止め、検討したい」と前向きな考えを示していたが、2日後には「具体的にどうするかは、今後の課題だ」と発言を後退させた。
「特定秘密」漏えいがあった場合、報道機関への家宅捜索の可能性を問われ、森氏は「オフィスにガサ入れ(家宅捜索)することはない」と明言していた。しかし、谷垣禎一法相らは「具体的な事例に即し、検察で判断すべきだ」と家宅捜索の可能性に含みを持たせた。
これらの認識の違いは、行政による恣意(しい)的運用の余地を大きく含む法案の危うさが、早くも露呈したものと言わざるを得ない。
国民の「知る権利」などを侵害する重要法案を、わずかな期間で成立させようというのは、あまりにも乱暴だ。
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特定秘密保護法案について、本紙が県内41市町村長にアンケートを行ったところ、約4割(17人)が法案そのものに「反対」の意向で、約7割(31人)が議論不足などを理由に、今国会での成立には反対だった。
また、賛成・反対のどちらでもなく「現時点で判断できない」とした回答が最も多く20人に上るが、法案の問題点を指摘した意見が多い。
一方、県関係の衆参国会議員10人のうち、自民党の5人全員が「賛成」と答えている。同法案では、特定秘密を漏らした国会議員も罰則の対象となる。
成立すると国政調査権や国会議員の活動にも影響が及ぶ。「秘密会」などを通して特定秘密に接する国会議員が、国会の外で秘密を漏えいした場合、最高5年の懲役が科せられる。賛成を表明した議員は、これらの認識が薄いのではないか。
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自民、公明両党は野党と法案の修正協議を行い、今週中に衆院を通過させる構えだ。
安倍晋三首相は16日、第三者機関の設置について「第三者的な仕組みによって適切な運用をすることも重要な課題だ」と述べた。しかし、それで指定の妥当性までチェックできるのか不透明だ。
共同通信が10月下旬に実施した世論調査では反対が50・6%と過半数を占め、慎重審議を求める意見は82・7%に上った。国民の懸念は膨らむばかりである。政府は世論を受け止め廃案にし、一から出直すべきだ。