風知草:秘密との、つき合い方=山田孝男
毎日新聞 2013年11月18日 東京朝刊
私はそうは思わない。国際社会の波風はますます強く、しかもアメリカが警察官役から退いていく。日本の自立・自衛が問われている。軍事は邪悪、秘密は暗黒という過度の思い込みを改める必要がある。
秘密保護法案の最大の論点は、官僚が秘密を乱造し、闇へ葬るという不信だ。その恐れは十分にある。アメリカは秘密も多い(多過ぎて流出が続く)が、2500人を擁する国立公文書館の権限が大きく、管理が分権的だ。日本の公文書館はわずか40人で、霞が関の抵抗を覆す力はない。
秘密保護法案の問題は多いが、規制が緩いままではかえって社会の安全が脅かされる側面もある。
日本で活動し、日本を観察した旧ソ連のスパイに警句がある。「確かに民主主義は開放的な制度だが、民主主義そのものを損なうほど開放的であってはならないのだ−−」(「KGBの見た日本/レフチェンコ回想録」84年)
味わうべきだと思う。(敬称略)(毎週月曜日に掲載)