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「世界の流れは脱原発」という主張をする人が多い。しかし、原子力とエネルギーをめぐっては、各国ごとに状況は入り交じり、単純に要約はできない。他国での見方の一例として、米国で評判になり、来春、日本で公開される映画「パンドラの約束」を紹介したい。
映画のポイントは、米英の著名な「環境派」の5人が、原子力への「批判」から「評価」に考えを変えた経緯を、自ら語っていること。それらの話の間にチェルノブイリや福島の情景、エネルギー不足に悩む発展途上国の現状、さらに新型原子炉など、エネルギーをめぐるさまざまな問題が紹介される。ただし、福島原発事故を経験した日本人からみると、原子力の推進にやや偏っている。
映画には、1960年代から米国の環境運動の中心的存在である作家のスチュワート・ブランド氏が登場した。これが私(石井)には印象に残った。同氏の「Stay Hungry, Stay Foolish」(貪欲であれ、愚かであれ)という言葉を、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏が引用したことで再注目された。
ブランド氏はかつて原発に反対していたが「気候変動と大気汚染を抑制しながら、途上国で急増するエネルギー需要に応じる手段は原子力利用しかない」と、考えを転じた理由を話していた。
ブランド氏のいうように、大量発電が可能で大気汚染をしないという長所に注目して、中国やインドなどの新興経済国は原発の建設に熱心だ。