◇九州場所<8日目>
(17日・福岡国際センター)
平幕の碧山(27)=春日野=が母国・ブルガリアの先輩、大関琴欧洲(佐渡ケ嶽、今場所は途中休場)の激励にこたえて1敗を堅守した。両横綱が8連勝とし、白鵬(28)=宮城野=は自身の持つストレート勝ち越しの最多記録(1場所15日制定着後)を30度に伸ばした。日馬富士(29)=伊勢ケ浜=は豊真将を押し出して初場所以来の全勝ターンとなった。
尊敬する母国の英雄から激励を受けた。「休場した琴欧洲関と話をしました。心配しました。でも(逆に)『頑張れよ』と言われました。頑張るしかないです」。碧山はそう言って笑みを消した。
佐田の富士を突き切れなかった。だが先手を奪って攻め続けた。192センチ、193キロの巨体からあふれるパワーで、201キロの佐田の富士を押し倒し、1敗をキープ。両横綱の背中にぴたりとついている。
秋巡業や場所前の稽古で琴欧洲の胸を借りてきた。「(勝てるのは)場所前の稽古です。しっかり稽古ができた」。再出場を断念し、来場所は関脇で大関復帰に挑む琴欧洲への恩返しは、白星を重ねていくことだ。
発奮材料はほかにもある。「1年前に土地を買って家を建ててます。今は借りた家に住んでいますから」。ブルガリアの首都ソフィアから約350キロ離れた、生まれ故郷のヤンボル州エルホボには両親と弟が住む。
「お母さんは手づくりのサラミをブルガリアから送ってくれます。ブルガリアではサラミはどこの家でも手づくり。おいしいです」。遠く離れていても家族の愛情に包まれている。
「エルホボはトルコ国境から40キロか50キロ。(シリア問題で)シリア人がトルコからたくさん入ってきて大変です」と苦笑いするが、700平方メートルの土地に2階建て5LDKの一軒家を建築中だ。
「寒くなるから、工事はまた暖かくなってからです。両親の部屋と弟の部屋。それから、ブルガリアに帰ったときの自分の部屋もあります。来年の夏には完成します」
それを楽しみに、場所中は午後10時30分には就寝し「ほとんど部屋にいます」という規則正しい生活で相撲に集中している。母国の英雄、そして家族のため。そう思えば思うほど、自然と力が湧いてくる。(岸本隆)
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