読者の皆様に考えていただきたいのですが、「正義」とは何でしょうか?
アンパンマンや仮面ライダー、水戸黄門の世界は単純です。正義と悪は明確です。善悪二元論の世界です。しかし、これはあくまでテレビ番組の世界です。
日本の歴史教育では、第二次世界大戦の枢軸国(敗戦国)は悪、連合国(戦勝国)は正義のように教えられています。日本やドイツ、イタリアは悪い国であると。
しかし、実際はどうなのでしょうか?
枢軸国は確かに悪の部分がありました。しかし、民族浄化(ユダヤ人虐殺)はともかく、日本軍の行いはあくまで戦争の中での軍事的な戦闘行為であったものだと考えられます。枢軸国に悪い部分があったのは事実ですが、枢軸国にはそこに至る背景がありました。戦争前に英仏によってドイツは多額の賠償金を負わされました。フランス軍のルール占領を原因とするハイパー・インフレーションも経験しました。こうして、ドイツ国民は追い詰められて、極端な世論が形成されたのです。日本は、米英蘭などに石油資源を止められ、ハルノート(最後通牒)を突き付けられました。つまり、連合国が戦争前に枢軸国を必要以上に追い詰め過ぎたということです。さらに、連合国も、アメリカは日本に対して原爆投下や大空襲によって多数の民間人殺戮という戦争犯罪に近い行為をしたわけであります。
他にも、幕末(明治維新)における江戸幕府は悪(賊軍)、明治新政府軍は正義(官軍)とされるなど、物事を単純に善悪二元論に貶める議論がみられることがあります。
私は、こういった単純な善悪二元論は実情を正しく反映していないし、物事が歪めて理解されることになると危惧します。
ネット右翼の方々は、「民主党=悪、自民党=正義」といった間違った善悪二元論を信じています。確かに、自民党は「相対的に」愛国議員が多いのは事実でありますし、長年政権を担ってきた経験があるので、安定感があるのは事実です。しかし、先のブログ記事(移民推進議連 小池百合子会長)で示したとおり、自民党にも多数、移民政策に積極的な、(ネトウヨ的にいえば)「売国」議員がいるのです。
もちろん、ネトウヨ的にいう「売国」議員の方々にも、それなりに論理的な思考(政策的な背景)はあるのでしょう。日本は人口が減少していますから、労働力不足に備えての政策提言なのでしょう。しかし、これには多大な副作用(日本的な文化の変質や社会不安)が伴うため、当ブログとしては絶対に受け入れられません(だから、ネトウヨも「売国」と指弾するのでしょう)。
問題は、(相対的にマシとはいえ)自民党にも売国要素があるにもかかわらず、なぜか、ネトウヨ的には「自民党=愛国、民主党=売国」という単純な善悪二元論が広まっていることです。善悪二元論はわかりやすいので、政治的な扇動に利用されることもあるので非常に危険です。
チャンネル桜に出演していた憲政学者の倉山満氏は、さかんに「安倍総理=善(増税反対)」「木下財務次官=悪(増税推進)」というプロパガンダを広めていました。
しかし、このプロパガンダが嘘八百であることは、上の画像の右側を見ていただければ明白です。こんなニュースもあります。
「消費税先送りはない」 安倍首相が明言したオフレコ懇談の中身
ネット上では、「安倍晋三=完全な正義、英雄」のような間違った主張がまかり通っています。その結果、安倍晋三に対する批判は非常にやりにくいのが現実です。「保守」であるならば批判は封印されていました。最近はマシになりましたが。
結局は、筆者は、「完全な正義」「完全な悪」などというものは、世の中にほとんど存在しないと考えています。もちろん、オウム真理教など一部の例外はあります。
しかし、民主党にしても、90%は売国であったとしても、10%くらいは良いことをしている可能性があります。自民党も、ネットではやたら持ち上げられますが、実際は60%くらいは売国的な政策なのではないでしょうか?
また、重要なことですが、自民党にしても民主党にしても、さらには竹中平蔵にしても、もっといえば共産党であったとしても、彼ら自身は「我こそは正義」と思っていることです。
結局は、個人個人、各組織がそれぞれの「正義」を訴えて、それを国民がどう判断するか?というだけの話なのではないでしょうか?もちろん、刑事事件の場合は国家(裁判所)が正義を判断することにはなりますが。
2.「完全否定」はやってはいけない
第1節で述べたとおり、「完全な悪」がめったに存在しない以上は、「完全な否定」をしてはいけないのであると私は考えています。たとえ民主党であったとしても、です。大事なことは「完全な否定」ではなく、「悪い政策・悪い考え方」など、「事実に対する批判」をすることです。
「完全な否定」を安易にしてしまうネット右翼の方へ問いたいのですが、では、マシな自民党以外の政党は、消滅したほうが良いのでしょうか?「朝鮮半島へ核を落とせ」などと扇動的な発言をする人がいますが、では、朝鮮民族は消えたほうが良いのでしょうか?ありえない暴論、言ってはいけない発言だと思います。
確かに、民主党は売国ですし、維新の会は新自由主義です。しかし、「悪い政策」をあくまで批判し続けて、野党を育てることも重要ではないでしょうか?
また、先日のブログ記事(設計主義、「聞く」姿勢、歴史の連続性)でも書きましたが、日本だけでなく各国・各民族がそれぞれ、独自に何百年、場合によっては1000年以上の歴史を紡いでいます。簡単に民族の消滅を叫ぶ人たちは、その何百年もの歴史を終わらせたいと考えているのでしょうか?
身近な例で考えてみて下さい。あなたにも、嫌いな上司がいるでしょう。ものすごく性格が悪くて、嫌な上司。しかし、彼・彼女にも、家族がいるのではないでしょうか?家庭では、妻(夫)や子供がいて、ひょっとしたら愛し、愛される関係を築いているのかもしれません。また、その嫌いな上司も、30~40年の人生(歴史)を紡いできました。性格が悪くなってしまった原因もそれなりにあるのでしょう。そんな人を、たとえ憎んでいたとしても「消えればいいのに」なんて簡単に思ってしまってよいものでしょうか?
重要なことは、「人」の完全否定ではなく、「悪い性格」だとは思いませんか?
別に、私は「民主党や韓国を批判するな!」とは言いません。民主党や韓国は反日ですし、大いに批判するべきです。しかし、「事実を元に批判」をするべきであって、感情的な、憎しみを元にした批判(非難)はなるべくしないほうが良いということです。例えば、「慰安婦に強制性はなかった、あれは売春だった」と言うのは良いですが、「韓国人は消滅しろ!」などとは言うべきではないということなのです。
※この点では、筆者にも大いに反省すべき点はあるのですが。
人間には、多面性があります。韓国人にしても、全員が狂った反日ではありません。実際、「日本統治時代は良かった」と発言した老人も韓国にいたようです(亡くなりましたが)。私の知り合いにも何人か韓国人がいますが、彼らは日本が好きです。
さらに言えば、「売国的な主張をする人にも、それなりに論理的な根拠がある場合もある」ことを見落とすべきではないでしょう。そこまで見抜いた上で、批判と対案を提示できれば、良いと思います。
例えば、新自由主義者の主張する規制緩和や移民政策は、「供給の強化」を実現するためである場合が多いです。それを見抜いた上で、「じゃあ、日本人を増やせばいいですね?」「じゃあ、長期の財政出動(補助金)で供給を増やせばよいですね?」などと反論してやればいいのです。
3.天皇陛下の慈しみの御心と、日本人の「許し」の精神
山本太郎は、天皇陛下に手紙を直接手渡すという、不敬を働きました。これは断じて許されない行為です。それを受けて、山本太郎宛てに脅迫状と刃物が届く事件が起きました。これに対して、天皇陛下は山本太郎の身を案じられたというのです。
天皇陛下、山本太郎氏の脅迫事件を心配される
ネットでは、山本太郎について「市ね!」などと言う人もいますが、それを天皇陛下がお望みになっていると思うのでしょうか?私は、そうは思いません。陛下は、慈しみの御心をお持ちになっています。先代の天皇陛下も終戦直後、「全責任は私がとります。国民の生活だけは守っていただけないでしょうか?」とご発言されています。天皇陛下の御心は、私たち国民の想像以上に慈しみ深くあらせられるのではないでしょうか?
ネトウヨは「死生観」と軽く考えすぎているようです。ネット上の話ならば、FacebookやTwitterのアカウントが消えるだけですが、決してバーチャルな世界と混同してはなりません。
日本には、「許し」の文化があります。例えば、江戸幕府最後の将軍(賊軍の将)であった徳川慶喜は、死罪になることはなく、許されて後に政治家にまでなりました。
民主党や韓国を許せ、などとは毛頭言いません。私だって、特に韓国は大嫌いですし、あのような反日国家とは絶対に友好関係は持ちえないです。しかし、もう少し紳士的な、「徳」を持った批判をしていくべきではないかと考えているのです。
そして、善悪二元論は弊害が多いので、変な先入観なく、事実を元に政治家や政策を判断していくべきだ、というのが私の主張であります。