OPCW:シリア化学兵器廃棄の処理国先送り
毎日新聞 2013年11月16日 12時09分
【ハーグ斎藤義彦】化学兵器禁止機関(OPCW)の決定機関・執行理事会は15日、シリアの化学兵器を国外搬送し、来年6月末までに処理する廃棄計画を決定した。今後、本格的な廃棄プロセスに入るが、搬送先の有力候補だったアルバニアが同日、受け入れを拒否。受け入れ国名は決定に盛り込まず、国外廃棄の詳細計画は来月に先送りした。また処理後に出る大量の有害廃棄物は、施設を建設しての燃焼処理が必要で、2億〜3億ユーロ(約260億〜400億円)とみられる費用を国際社会がどう分担するかも課題だ。
シリアは内戦下で資金も技術もないため化学兵器の国外搬出を要請。執行理事会は承認したが、あくまでシリアが処理に責任を持つことを明確にした。
シリアの化学兵器1290トンは、全量が混ぜれば毒ガスを発生する「前駆物質」でタンク保管されている。マスタードガスやサリンの原料など危険度の高い1000トンは年末までに国外搬出、残りの大半は2月5日までに搬出する。工業原料や消毒剤に使われるイソプロピルアルコールはシリア国内で3月1日までに廃棄する。
マスタードガスやサリンの原料などは3月31日までに処理。残りは6月30日までに処理を完了する。
決定には搬送先や処理方法、必要な資金量は盛り込めなかった。OPCW事務局に来月2日までに報告、17日に詳細な計画を提出するよう求めた。期限が守れない場合は、代替日程を認める。
アルバニアが受け入れを拒否したことでベルギーなどでの処理が有力視されている。
処理は米国の移動式の加水分解処理施設3基を使用。その後、5000〜7000トン出る有毒廃棄物を、燃焼施設を建設して最終的に廃棄する。執行理事会は廃棄費用を工面するため信託基金の設立も決めた。各国に拠出を求める見通し。