使用済み燃料取り出し前に4号機公開
東京電力福島第一原子力発電所4号機の使用済み燃料プールから燃料を取り出す作業が近く始まるのを前に現場が報道関係者に公開されました。
福島第一原発4号機は、おととしの事故で、隣の3号機から流れ込んできた水素が原因とみられる爆発で原子炉建屋の上部が大きく壊れました。建屋5階にある燃料プールには、福島第一原発の中で最も多い1533体の燃料があり、このうち、強い放射線を出す使用済み燃料が1331体と大半を占めているため、燃料プールから取り出して別の施設に移す計画です。
6日、取り出し作業が行われる現場が報道関係者に公開されました。およそ10メートル四方の燃料プールには、事故で大量のがれきが落下しましたが、今はほとんどが取り除かれ、プールの上には燃料を取り出すための燃料取扱機と大型クレーンが新たに設置されています。
これらの機器を作業員が操作し、プールの中で放射線を封じ込めるキャスクと呼ばれる専用の容器に燃料を22体入れたあと、キャスクをプールから地上に降ろして共用プールという別の施設まで運びます。東京電力は、原子力規制庁の検査などを経て、今月中旬から燃料の取り出しを始め、来年末までに1533体の取り出しを終える計画です。
しかし、燃料プールの中には、細かいがれきが残されていて、燃料を収めているケースから燃料を引き抜く際、入り込んでいたがれきが妨げになるおそれがあります。また、事故の影響などで燃料が損傷しているおそれもあり、慎重に作業を進める必要があります。
4号機燃料プールからの燃料の取り出し開始は40年にも及ぶとされる廃炉の工程の最初の大きな節目と位置づけられていますが、作業が着実に進められるかが課題です。
福島第一原発の小野明所長は「4号機からの燃料の取り出しで本当の意味での廃炉作業が始められる。ただ、通常の原発と比べて高い放射線など作業環境が悪いので今は緊張感の方が大きい」と話しています。
大きなリスクの一つ
福島第一原発4号機の使用済み燃料プールにある燃料は、事故後に残された大きいリスクの一つです。
おととしの事故の際、4号機は定期検査中で、原子炉に燃料はありませんでしたが、燃料プールには1535体と最も多くの燃料が保管されていました。このうち、1331体が使用済み燃料で、高い放射線と熱を出し続けています。
しかし、津波の影響で電源が失われ、4号機の燃料プールも冷却できなくなりました。事故から4日後の3月15日には、4号機の原子炉建屋で水素爆発が発生します。冷却ができないうえに、爆発で損傷しているおそれもあり、水が蒸発して大量の燃料が溶け落ちた場合、大きな被害が出ると懸念が広がりました。
爆発の翌日、上空のヘリコプターから4号機の燃料プールの水位が維持されていることが確認されましたが、がれきが散乱し、放射線量も高いため、特殊車両による一定の注水ができるようになったのは、事故から10日以上たった3月22日でした。
おととし7月からは冷却水を循環させる安定したシステムに切り替わり、現在、燃料プールの水温は26度前後に保たれています。プールの放射性物質の濃度も上昇していないことから、東京電力は燃料に損傷はないとみています。
燃料プールの耐震性も問題になりました。余震などで壊れないよう東京電力はおととし7月、燃料プールの底の部分を補強しました。
去年5月には建屋の壁の一部が傾いているのが見つかり、改めて建屋や燃料プールの耐震性を解析しました。震度6強の揺れでも壊れないと評価されましたが、地元の不安は根強く、東京電力や国は4号機の燃料プールからの燃料取り出しの準備を急いできました。
燃料取り出しの手順は
4号機の使用済み燃料プールにある燃料は、プール内の燃料ラックと呼ばれるケースに収められています。これらの燃料は、燃料取扱機と大型クレーンという、事故後、新設された機器を使って取り出されます。
燃料の上部にはハンドルという取っ手があり、ここに燃料取扱機のフックを引っかけて燃料ラックから引き上げ、燃料が水面から露出しないようにキャスクと呼ばれる専用の容器に移します。このとき、燃料ラックと燃料のすき間に細かいがれきが入り込んでいたり、燃料が変形していたりするおそれがあり、1秒に1センチというゆっくりとした速さで引き上げ、異常な重みを感知した場合は自動停止します。
キャスクには最大で22体の燃料が入り、ふたを閉めて密閉したうえで、大型クレーンで水中から取り出されます。ここまでの作業が2日にわたり、合わせて12時間かかるということです。
その後、容器についた放射性物質を取り除く除染や放射性物質の漏れがないかの確認をしたうえで、トレーラーに載せられ、100メートルほど離れた「共用プール」と呼ばれる別の施設に移されます。運搬に使うキャスクは2つ用意されていて、1つのキャスクが燃料を運び、共用プールで下ろすまでに8日から10日かかるということです。
また、燃料の取り出し作業が行われるのは日中だけで、夜は燃料プールに残っている細かいがれきの撤去作業が行われます。
初回は、未使用の新しい燃料を取り出すということで、大半を占める使用済み燃料を含め1533体すべてが取り出されるのは来年末になる予定です。
さまざまな課題も
強い放射線と熱を出し続けている使用済み燃料は、通常の原発でも厳重に管理されていますが、今回は事故の影響が残る特殊な状況で取り出されるため、さまざまな課題が指摘されています。
まず、保管されている燃料の状態です。おととしの事故の際、4号機は水素爆発で原子炉建屋の上部が壊れたうえ、電源が失われて、燃料プールの冷却が止まり、一時、海水が注入されました。落下してきたがれきによる破損や海水による腐食が懸念されています。
東京電力は去年、4号機の燃料プールから未使用の燃料2体を試験的に取り出しましたが、破損や腐食は見つかりませんでした。また、がれきに見立てた重さ100キロの鉄の塊を落下させる実験を行い、燃料の変形は比較的小さく、取り出しに問題はないと結論づけました。
次に燃料プールに残るがれきです。大きいがれきは撤去しましたが、細かいがれきが燃料と、ラックと呼ばれる燃料を収める入れ物のすき間に入り込んでいるとみられます。燃料が抜けなくなったり、損傷したりするおそれがあり、燃料が損傷すれば、放射性物質が漏れ出し、危険です。
このため、東京電力は1秒間に1センチ程度の速さでゆっくりと燃料をつり上げ、引っかかった場合は、作業を止めて、がれきを専用の工具で取り除くことにしています。また、損傷していることが分かった燃料は新たに作った容器に入れて取り出すほか、途中で落下しないようクレーンのワイヤーを二重にするなどの対策を取りました。
このように、今回、事前の検討や対策が行われてきましたが、これまでに見つからなかった燃料の損傷や取り出しの妨げになるがれきが潜んでいるおそれがあり、作業が順調に進むかは未知数です。
現場は今も1時間当たり200マイクロシーベルト程度と、通常より高い放射線量が観測され、トラブルなどの対応が長引けば、熟練の作業員の被ばく量が増え、作業に影響するおそれがあります。
4号機の燃料プールからの燃料の取り出しは来年いっぱい続けられる計画で、被ばくを抑えながら、安全に作業を進められるかが課題になっています。
投稿者:かぶん | 投稿時間:19:25
| カテゴリ:科学のニュース
コメント(1) | トラックバック (0)
トラックバック
■この記事へのトラックバック一覧
※トラックバックはありません
コメント(1)
年百年もかかるかもしれない(東電に関する事は全て「最悪」で以て予想)廃炉を担うべき、原子力工学を学んでいる若者は今日本にどの程度いるんだろうか?作業員の方々と同様に、何百人いても足りないかもしれないけれど、将来必要になる人材を、どんどん原子力管理技術先進国に向けて留学させて貰いたい。原子力の事は、私なんかが自分の目で見て確かめに行く訳にいかない。ちゃんとやっているんだろうか?青年海外協力隊で外に出ていく若者のように、「戻ってから居場所が無い」みたいな事にならないよう、将来を保証しつつ、育成していって欲しい。勿論、過去及び現在、また将来に、自らの健康を削って、福島サイトで働いてくれている人々の事も、国は、ちゃんと守ってあげて欲しい。どうせ税金を、有無を言わせず投入されてしまっているのなら、絶対にちゃんとやって欲しい。
投稿日時:2013年11月07日 19:21 | 教えて下さいな