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転生から十五歳まで
6話 誕生。および一歳の誕生日
深い微睡の中から、徐々に覚醒していく意識。
長らく眠っていたようで、重く動きにくい体を感じながら意識を覚醒へと導く努力をする。こんな思考が出来る時点で意識なんかとうに目覚めてるけどw。

ハイどーも。神にチート貰って異世界転生を果たそうとしている真っ最中の元北条琢磨です。
今のは、あれだよアレ。異世界転生に付き物の出生時の赤ん坊の内心を映そうとしてたんだよ。自分でやってて矛盾してたからやめたけど。

現在は多分産道を通っている最中だと思います。何故多分なのかって?
そりゃあ胎内では目を開けられないからだよ。俺は風呂では必ず目を瞑る派なのだ。目に水入ると痛いし。
そして胎内では無く産道nowだと思うのは、俺の後頭部辺りに温かい光が当たっている…気がするからだ。ついでにそっちの方から声聞こえるし。こんな状態でも耳がちゃんと働いていると知って俺はビックリだよ。

現在は俺の母親が分娩台に乗ってから約30分位経ったかな?俺も母親に負担を掛け過ぎないために、自分からも動いて出ようとしている。極力痛く無い様に、されど確実に進むのは中々難しい。本当にちょっとずつしか進まないし。

ただ、俺の長い戦いはもう少しで終わりを迎えるだろう。後頭部感じた温かい光が、今では頭部の上半分を覆うくらいにデカくなって来ているし、声もさっきよりも明瞭に聞こえる様になってきた。出口が近い証拠だ。

光が更に大きくなり、頭に違和感が走る。さっきまでは産道の中だったのに、今では頭頂部に直に空気が当たっているヒヤリとした感触があるのだ。恐らく出口に僅かに出たのだろう。後は本当にもう一息だ。

母親に内心ごめんなさいと謝りつつ。今までよりも強く体を動かして頭を出していく。脚から出て来なくて良かったな、マイマミーよ。最初は足から出そうだったから俺が修正したんだけど。あれはホントきつかった。

頭部が完全に光の下にさらされると、俺はそこで動くのを止める。代わりにギュッと身を縮こまらせて、出させやすくする。

恐らく助産婦と思わしき人が俺の頭を優しく、壊れ物を扱う様に掴み、されど力強く俺の体を引っ張る。

縮こまらせていた俺の体は、呆気なく母親の体から脱出した。まだ臍の緒が残っているけど、直に切られるだろう。

助産婦が俺を清潔なタオルで巻き、抱きかかえられる。元気な男の子ですよー、と嬉しそうな声が俺の上あたりから発せられた。良かった。TSせずに済んだみたいだ。

その助産婦の声に反応したのは、俺がさっき出てきた位置にいる母親の右あたりにいる父親だろう。良かったな、と少し鼻声で妻に話しかけているのが聞こえる。

え?何故俺にそんな事細かに状況が分かるのかって?そりゃあ目を薄目で開けているからさ。光が眩しいけど、そろそろ瞳孔が収縮したころだし、もう少し開けても大丈夫だろう。

光に不慣れな目を開け、周囲の状況を確認してみる。

最初に目に入るのは俺を抱きかかえている助産婦。日本の病院みたいなライムグリーン+青みたいな服じゃなくて、清潔そうな白色のどちらかと言うとエプロンみたいなのを着ている。ちゃんと三角巾とマスクみたいなのはしてるから衛生面では問題ないのだろう。

ゆっくりと首を動かし、両親らしき人達を見てみる。
俺から見て右側にいるのが母親。プラチナブロンドの長い髪を分娩台に乱れさせ、荒く息を吐いている超美人さん。街中を歩けば10人中10人が振り返り、日本のテレビにチョロッとでも出れば話題沸騰するレベルだ。今は大股開きである種官能的な色気を醸し出している。あの妊婦さんが着る様なダボッとした服でなけりゃ俺からその股の奥にある俺が出てきた穴も見えてしまっていただろう。卑猥だ。

そんな彼女の右横、俺からしたら彼女の左側にいるのが父親だろう。母親とはまた違った金色のジャギショートで、精悍な顔つきは女子から黄色い声を上げるためにでもあるかのよう。クソ死ねイケメン。
…おっと父親に対してこんな悪口はいかんな。失敬。
絶賛疲労中な妻の手を無骨な大きな手で握りしめ、優しくよくやったとか頑張ったなとか労いの声を掛けている。その様まで絵になるのだからイケメンはズルい。俺もそうなるはずだけど。
まあ、俺の両親は似合いのカップル、と。リア充めが。

あ。因みに、俺は周囲を観察しながら産声をあげまくってる。赤ん坊は泣くことが義務だからな。と言うかこの時にないとか無いと以上でもあるんじゃないのかと思われるし、心配を掛けないためにも必要なのだ。オギャア。え?可愛くないって?すまそ。

一通り産後の措置が終わったのだろう。俺が助産婦の手により、父親の手に渡される。
父親はだらしなく頬を緩めて俺を見て、そのまま俺を母親にも見る様な位置に持って行く。
母親は涙を浮かべながら俺を見て、そしてまだダルイだろうに腕を上げ、俺の頭をゆっくりと撫でてくれた。心地良い。

ふわぁぁぁ。ダメだ。眠い。やっぱこんな体で無茶するんじゃ無かったな。推定時間三十分以上も体を動かしていたんだ。赤ん坊の体力ではかなり疲労が溜まる。

俺は睡魔に抗えず、そのまま両親の腕の中と言う懐かしくも心地良い眠りについた。



◇◆◇◆◇◆



「「「ハッピーバースデートゥーユー。ハッピーバースデートゥーユー。ハッピーバースデーディア、シャーロンー。ハッピーバースデートゥーユー。オメデトー!」」」
「あいやとー」

ハイ。新たな名前はシャロンとなった元北条琢磨です。前世だとシャロンは女性の名前だけど、こっちは文明が中世だからか、以外とそう言った感じの名前が多いのだ。この一年で知ったカルチャーショックの一つだけど、親から貰った大切な名前だし、これからはちゃんとシャロンと名乗ります。郷に入りては、ってやつ。

現在は俺が生まれてから月日が廻った一年後の今日。賑やかなマイファミリーは俺の一歳の誕生日を祝ってくれています。誕生日の歌まで一緒だとは思わなかったけどな

四角形の机には、俺から見て右側に両親。そして母親の膝の上に妹が座って、左側には俺の姉が居ます。それと壁際には数人のメイドが立っている。彼女達も微笑み、俺の誕生日を祝ってくれている所ですよ。俺は我が家のアイドル的地位を数々の策略により手に入れたのだ。策略(笑)だけど。

机の上にあるドデカイバースデーケーキに立っている蝋燭を、肺活量を総動員して消すと、部屋に明かりが灯され俺は拍手に包まれた。こうやってまともな誕生日会をしたのは何時だったか……。この世界に来てからは懐かしい事ばかりだ。来てよかったと一年目ながらも既に思えている。

さて、ここで我が家について説明しようか。
まず、我が家は貴族だ。確か下から二番目とかの低い地位の貴族だけど、親父が武功を賜って貴族に抜擢されたのだとか。メイドの立ち話から集めたから詳細は知らん。

家の話はまた今度にして、家族に移ろう。

「ふむ。シャロンもこの一年で大分大きくなったな」


嬉しそうに微笑み、大きく頷く。向かって右側の手前側に座っているのが親父様である、ジンクルス・ベルド・フュード。
ジンクルスが名前で、ベルドが苗字。フュードは貴族名だ。長ったらしいったらありゃしない。
アグレストには平民でもきちんと家名があるらしく、地球の外国人みたいな感覚で、苗字と名前を日本とは違って逆に言う。因みに貴族は貴族名が家名になるらしい。
彼は王国の元騎士団長で、平民からの叩上げの武人だったらしい。武功を賜り、貴族となった彼は小さいながらもきちんとした領地も賜り、そこを治める為に騎士を止めた。今でも鍛錬は積んでいるけど。因みに彼は31歳。姉が今2歳だから、彼が生まれた時は29歳。若くして騎士団長まで上り詰めた逸材だったのに辞めてしまうとは勿体無い。
厳格な性格だが、親馬鹿すぎてその性格が俺の前で発揮されたことがない。ちょろ過ぎる。

「ええ、ホントに。最初はこんなだったのにねえ」

手で俺の大きさを示し、あらあらウフフと笑っている。親父様のその奥。彼の愛する妻であり、俺の母親様である、ベリス・ベルド・フュード。語呂が悪いが気にしない。彼女も貴族子女であり、彼女の父親、つまり俺の爺様は文官の中でもかなり偉い地位にいる人らしい。だから、脳筋な親父様は英才である母親には頭が上がらないんだとか。何でも領地経営のノウハウを叩きこまれたらしい。そこで親父様は知恵熱を起して寝込んだらしいが。ドンマイとしか言う他ない。
親父様との馴れ初めは、騎士の鍛錬中に偶然城に来ていたベリスがその中のジンクルスを見て一目惚れ。逆にジンクルスも彼女を見て一目惚れ。貴族位を賜った後はそのまま目出度くゴールイン。何このラブコメ。パルスイートの味がする。
因みにスタイル抜群で、母性の象徴は聖母級。臀部は軍艦級。破壊力がマジパナいっす。
基本的にポワポワとした性格だが、極度の親馬鹿すぎてさらにポワポワ度が増している模様。チョロイ人2号。

そして視線を左に写せば、ニコニコと笑っている姉が目に入る。う、嬉しそうですね、姉さん。

「シャロン、いっさいのたんじょうびオメデトー!」

ニッコリと笑い、さっきも言った祝いの句を述べるのは、母親譲りのプラチナブロンドのロングヘアーな幼女、俺の姉であるミルニアだ。クリクリッとした金色の目をしていて、もう可愛いの一言に尽きる美幼女だ。将来は母親に似て美人に育つだろう。我が家のマスコット的存在で、常に愛想を振りまいている。幼いながらもちゃんと俺と妹のお世話をしてくれる頼れる姉だ。
欠点を上げるなら、重病過ぎるブラコンだという事か。メッチャ俺に構ってくる。妹の世話もちゃんとしてあげてるけど、構う割合的に俺にベッタリだ。風呂まで自分で入れたがる。抵抗する必要もないから為すがままだけど。
まあ、良い姉である。うん。異論は認めない。

最後に、視線をもう一度左に移して、母親様の膝の上に鎮座している妹を見やる。

今交わされている家族の会話に唯一参加せず、哺乳瓶を咥えているのが俺の妹であるカレン。まだあまり生えていない髪は、親父様に似た金色。しかし目は俺達の誰とも違う紫水晶(アメジスト)の様な紫色をしている。そう。彼女は俺達フュード家とは直接の血縁関係は無い。
ある日、父さんがどっか遠い所から帰って来る時に、死にそうな女の人に抱かれたカレンを見つけたそうだ。その死に掛けの女の人に、抱かれた赤ん坊、カレンを託されたんだ。
いきなり知らん乳幼児を連れて来た時はビックリしたし、どこのお伽話だよ!って突っ込みそうになったけど、今では普通に兄妹として接している。
顔立ちは今でも整っているので、将来はミルニアに負けず劣らずの美人になるだろう。

さて、一通りの紹介は終わり……えっ?俺の容姿?聞きたいの?男の容姿なんて聞いても仕方ないでしょ?ああ、イケメン設定が気になるのね。それじゃあ教えちゃおう。

シャロン・ベルド・フュード。ナウで1歳になった幼児だよ。髪は銀髪(・・)、眼は金と銀のオッドアイ(・・・・・・・・・)。顔立ちは知らん。鏡を見たことがないからな。鏡は高級なんだ。流石に母様の化粧台にはあるけど、化粧台が高くて手が届かんのだ。だから容姿はそのうち。

………うん。言いたいことは分かるんだ。と言うかむしろ俺が文句を言いたいよ。
直接の血縁である俺が、そうでないカレンより特徴を受け継いでないって言うね。本当にオッドアイかは鏡がない例によって知らんけど、受け継いでいるのは申し訳程度に右目の金の瞳だけだよ。

これ初めて聞いた時はビックリした。真相は分からんけど、一回メイドさんが少し話してた魔力量の影響が原因だと思う。極稀に魔力の多い人が居て、その人は自身の魔力の色に目や髪が染まるんだとか。如実に出るのは髪で、目にそう言った症状が出る人は少ないらしいから、俺は隔世遺伝子を受け継いだと思われている。丁度曾祖父に銀髪銀眼の人が居て良かった。

魔力云々の理由に寄るなら、俺の魔力は銀色なんだろう。細かい色も言わせてもらうなら銀白色かな。ちょうどそんな色だし。目まで染まってるってことは、俺は髪だけに収まらない魔力を持っていると。片目が金色なのは俺の遺伝子が頑張ってくれたのだろうか。グッジョブDNA。二重らせん構造はきちんと仕事をしたみたいで何よりだ。今度タンパク質を取って報いなければ。

家族についてはこんなもんかな。メイドさんについては家に家政婦みたいなもんだ。ちゃんと執事の人達もいるんだけど、今は忙しく動き回っているのでこの場には居ない。

おっと。カレンがおねむのようだ。そろそろパーティーはお終いかな?

「シャロン様。お部屋にお戻りしましょう」
「はーい」

1人のメイドさんに脇を抱えてもらい、椅子から降りる。早く大きくなりたい。でないと一人で出来ないことが多いからな。

では皆さん。サラダバー。

心の中でつぶやいた俺は、そのままそのメイドさんと手をつなぎ、先導されながら部屋に戻った。
ご指摘がありましたのでシャロンの名前の説明を少し加筆しました。

ご指摘、ご感想ありましたら、ドシドシ下さいm(_ _)m


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