若者の労働相談やブラック企業対策に取り組むNPO法人「はたらぼ」の代表理事、中嶌聡さん(30)に若者の現状や経済成長への思いを聞いた。

 ――今の20代ら若い世代の特徴は。

 昔に比べて素直になっていると感じます。おかしいと思ったら、「これおかしくない?」と率直に口に出すようになっている。一方で、働いている会社などに問題があるときにそれを変える方法を知らない。変えられるとも思っていない。昔は立ち上がって声をあげれば、何か変えられるとか影響を与えられる、というものがあったと思う。自分が社会に影響を与えられると思ったら、どういう手順でどういう風に変えていくかを一生懸命考えて、みんなと一緒に動くと思います。しかし、変えられると思っていないので、若い人はそういう動きをまったく知らない。愚痴を言うだけで我慢するか、逃げるしかないんです。

 ――なぜでしょうか。

 経験の不足だと思います。例えば私の中学時代、靴下はワンポイントまでとか、マフラーは何月からとか制服の規制がすごく強かった。それに対して不満があるわけじゃないですか。でも、それを破って先生に怒られると内申点に響くわけです。結局、不満はあるけど従順に従う道を選ぶ。おかしいでしょと生徒会で要求を絞って校則を変えていくとか、そういう経験が小中高校、大学、社会人になるまで一度もない。社会を変えることとほど遠いことでも、身近なことから現状を変える経験を積み重ねることが大事だと思います。

 ――安定志向の若者が多く、保守的になっていると言われています。

 若い人の考えって、経済状態にすごく反映されると思うんです。経済基盤が弱くなった人間がどういう方向に走るかは、若者見ていればわかる。個人の経済状態が安定していないから、社会がデフレになると自分の生活もデフレになって、発想も次第に乏しくなっていく。

 ――今後は経済成長を第一に目指すべきなのでしょうか。

 右肩上がりの経済成長を打ち出す政策には拒否反応があります。昔は大企業が潤えば、労働者も潤いました。しかし、今はたとえ大企業が潤っても下請けや労働者にお金は回らない。企業の利益は一定程度減っても、お金を回していく社会をつくるべきだと思います。

 ――どういう社会を目指すべきでしょうか。

 能力があるのに経済的な制約でそれを発揮できなかったら社会的な損失です。学費を無料にするなど、適材適所で貧しい家庭に生まれても一人ひとりが能力を最大限発揮できる社会を目指すべきではないでしょうか。(土肥修一)

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