ホテルなどで次々に発覚する食材偽装表示。「牛脂注入肉」などを使いながら、加工肉であることを示さずビーフステーキなどと表示していたことが問題となっている。そもそも牛脂注入肉は、どうやって作られるのか。製造現場を見た。

■所要時間、わずか1、2分

 ほとんど脂のない赤身の肉が、剣山のような機械を通り抜けると、霜降り肉のような姿に変わっていた。その間、わずか1、2分。

 ここは牛脂注入肉の製造工場。匿名を条件に、東日本の食肉加工業者が取材に応じた。

 赤身肉の塊がベルトコンベヤーを流れていく。主に豪州産とニュージーランド産の出産を経験した「経産牛」を原料に使うという。

 剣山のような機械は「インジェクター」と呼ばれる。下向きに長さ20センチほどの針が200本以上あり、下を通る肉を突き刺しては上がる。この動作を肉が通るたびに整然と繰り返す。突き刺したときに注入される牛脂は国産牛の脂を精製したもの。風味がよくなるアミノ酸などの添加物も入っているという。

 肉は業務用として卸業者へ。レストランや弁当屋などに幅広く流通する。

 加工前と後の肉を焼いてもらって試食した。加工前の肉はかたく、かみきれない。食感もパサパサで、うまみがほとんどなかった。

 牛脂注入肉は一度でかみ切れるやわらかさ。何よりジューシーで、うまみが口に広がった。

 牧草で育った外国産牛は肉質がかたい。牛脂注入でやわらかい肉を和牛より安く提供できる。「おいしい肉にする技術。自分の子どもにも食べさせている」と開発に携わる幹部は強調した。社長はイメージ悪化を心配する。「後ろめたいものは作っていない。誇りを持っている」