みらい図書館 ニコ生朗読7 2013/11/15(FRI) 19:30-20:30 放送!
http://live.nicovideo.jp/watch/lv154023117
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ゾクセイっ! phrase.2
「美少女三人寄れば? 針のムシロってやつです・・・」
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今の俺の目の前には、織部凛、冠城花音(かぶらぎ かのん)、石動舞奈(いするぎ まいな)――話題の少女党首三人がいる。
バチバチバチバチ
と、擬音が現実に見えそうな雰囲気だ。一触即発とばかりにその三人が睨み合っていた。
「はぁっ」と俺は溜め息をひとつ。
どうしてこうなったのか・・・新本に帰ってから、溜め息が多くなった気がする。
「世の中は不条理だ・・・」
そう呟いた俺は、また「はぁぁーー」と深い溜め息をついた。
織部凛へのインタビューがさっぱり出来なかった俺は、彼女らについて行けないかと話を振ってみたが、案の定、部外者にいてもらっては困る、と断られた。
しかし、帝都からわざわざ来てお茶とういろうを食べただけで帰るというのはバカらしいということで、俺と箕鑑君は少し足を伸ばして話題に上がっていた冠城花音が代表をしている和泉のルクミニ=シャンティの本部を尋ねてみた。
幸運な事に和泉の本部には冠城花音がいた。アポはしていなかったので受付の女性は最初訝しげだったが、名乗って名刺を渡すと代表に取り次いでくれた。
俺たちが応接室へ通されてから暫く経つと、冠城花音が現われた。
金髪で綺麗な顔立ちをしている。スレンダーに見えるが、胸元が大きく開いた服装と布地の上からでも分かる中身のボリュームが、女性らしさを強調している。
リボンやフリルの多めにあしらわれた服やふりふりのカチューシャがメイド服みたいに見える。いや、メイド服をアレンジしたものなのだろう。織部凛のところの佐川政美といい、今日は何故かメイド服に縁がある。
御古神愛海の時はコンサートだったから気にならなかったが、織部凛にしろ冠城花音にしろ、少女党首というのは奇抜な格好が多い。そういう風潮でもあるのだろうか。
「突然すみません。後日アポを取ってからお邪魔する予定だったのですが、別件でこちらに来たので、もしご都合が宜しければと思いまして・・・」
「いやー、帝都の記者さんもお疲れさまやねぇ」
と、堺訛りの冠城花音。
確か箕鑑君が新幹線の中で言っていた。英国人と新本人のハーフで、日本での名は冠城花音だが、二十歳までは新本と英国のどちらにも国籍がある為、カノン・冠城でもあるらしい。確か四分の一ほど、他の国の血も入っていたはずだ。
「ん、ああ、ウチはハーフっても子どもん頃にちょっと向こうにおっただけやからな。ほぼ新本人や。堺人ってもええよ。まぁ、言葉は訛りがいくつか混じってるけどな、エセ関西人とか言ったらあかんで~」
情報と堺訛りが違和感になっていた俺に、疑問を表情からでも察知したのか、こちらが聞く前に冠城花音がそう言った。
言った通りエセにしか聞こえないが、ここは黙っておくべきだろう。
「あ、いえ失礼。お綺麗なので見とれてしまっただけですよ」
誤魔化しがてらに柄にもない台詞を言ってしまう。
「記者さんは口が上手いなぁ。プレイボーイっちゅうやつか? なぁ、カメラの嬢ちゃん」
冠城花音は少し離れてカメラを構える箕鑑君に話を振った。
「あっ、はい。そうですね・・・・・・ジュンさんはあんまりモテないと思います」
何故か断言された。
「あははっ、はっきり言うわぁ」
心外にもウケられた。
「見た目は悪くないですが、空気読めないですし、女性への気配りとか苦手だと思います」
おい、箕鑑君に会ったのはまだ数日前だろう・・・と、心の中でツッコミは入れておく。
「ははぁ、ジュンさんはモテへんと。ほなさっきの発言は敏腕記者さんとしての営業用のリップサービスってことやね。寂しいわぁ」
と、一瞬の流し目のあとに、まったく寂しくなさげな明るい表情で冠城花音は言った。
「う~ん、つい最近まで海外にいたからじゃないでしょうか? 向こうの人ってそういうとこありますよね?」
箕鑑君が妙な丁寧語になってるな。そういえば織部凛のとこでもそうだったか。少女党首マニアだから本人の前で緊張しているのだろうか?
「ふ~ん、どこへ行ってたん?」
「あっ、私はそこまでは知らないです――」
ふたりの視線が俺に向く。しかし、俺をネタにこのままガールズトークにでもなったら困る。
「まあ、西の方へちょっと。ええと、私のことは置いて頂いて、早速インタビューさせてもらってもいいでしょうか?」
「ああ、すまんなぁ。ウチは雑談好きなもんやから。ええで、何でも聞いてや。まずはお決まりのスリーサイズからやね。上からはち――」
バタンッ!
冠城花音の言葉に「そんな情報は聞いてない!」と流石にツッコもうともしたが、その前に応接室の扉がノックも前触れもなく開いた。
「か~のんちゃん、つまんない話なんかしてないでボクと遊んでよ~♪」
そう言って小柄な少年がトタトタと入ってきた。
俺は「ふぅ」と小さく溜め息をつく。織部凛の時に続き、またしてもインタビューは難局を迎えたようだ・・・
「ジュンさん、ジュンさんってば!」
そう言って箕鑑君が俺の肩を揺する。
「ん、ああ、どうした箕鑑君・・・」
冠城花音と少年は何やら話しているようだが、ヘンに疲れて現実逃避しかけていた俺の耳には入ってこなかった。
「ぼーっとしてないでくださいよ。すっごいチャンスじゃないですかっ!」
「チャンス?」
俺には箕鑑君が何を言ってるか理解できなかった。突然の闖入者でインタビューを妨害されたこの状態がどうしてチャンスなのだろうか?
俺の座っているソファーの後ろから、箕鑑君がちょいちょいと手招きする。耳を貸せというジェスチャーのようだ。
よく分らなかったが、背をもたれさせて顔を近付けると、箕鑑君が耳元で囁く。
「ジュンさんやっぱり分かってなかったんですね。あの子、石動舞奈ちゃんですよ。スヴェトラーナ=レナータの・・・」
「うん?」
俺はその言葉を理解するのに数秒かかった。
スヴェトラーナ=レナータの石動舞奈・・・確かに最近聞いた覚えがあった。織部凛のところで飛び込んできた羽隠千鳴とかいう幹部の女の子が冠城花音と石動舞奈が協定を――そこまで考えると、俺の頭が急速に冴えてくる。
「ちょっと待て、あの少年――いや少女が石動舞奈か!?」
驚きつつも小声で箕鑑君に尋ねる。
「そうですよ~。れっきとした女の子ですよ。というかスヴェトラーナ=レナータの代表で地元の複合企業の社長令嬢でそこの役員もしていて、堺屈指のやり手実業家でもある花音さんにも負けないくらいの資産家ですよ」
声には出さなかったが、「この子がか?」という思いが駆け巡る。
御古神愛海のコンサート然とした政治集会に参加して、織部凛のことと少女党首たちについて興味を持って、先輩の関わっている雑誌に特集企画を作ってこうして足を運んでいる訳だが、ここ数年で新本は俺にとってなんとも信じ難い国になってしまったようだ。
俺は改めて石動舞奈を見る。身長は織部凛よりも少し小さいくらいか。性別はともかくとしても、正直子どもにしか見えない。明るい髪の毛に、不釣合いな大きなヘッドフォンをしている。服装のカラーは全体的に薄紫にまとめており、織部凛ほどではないが両手が隠れるくらいぶかぶかのシャツにショートパンツという少年っぽいスタイルだ。
「コホン。あの、冠城さん・・・」
俺は気を取り直して、石動舞奈と話している彼女に話かけた。
「ああ、すまんなぁ、記者さんほっぽらかしにしてしもうて・・・」
「いえ、よろしければそちらの方を紹介して頂いてもよろしいですか?」
「んっ、ボク? そういうキミは誰なんだよ」
冠城花音が答える前に石動舞奈がこちらを伺い、問いかけてきた。
「失礼。私はこういう者です」
そう言って俺は特集記事を掲載予定の雑誌社の名刺を渡す。
「ふ~ん、帝都の雑誌社の記者さんね」
俺をジロジロと訝しげに観察する石動舞奈。
「ボクは石動舞奈。記者さんなら名前くらい当然知ってるよね」
「はい。今は雑誌の特集を担当していまして、こちらのカメラマンは箕鑑奈津君です」
俺は彼女を紹介し、彼女もぺこりとお辞儀をする。
「本日は冠城さんにインタビューに伺いましたが、近いうちに石動さんのところにも伺わせて頂く予定でした。もしよろしければお二人にお話を伺わせて頂いても――」
バタンッ!!
応接室の外でなにやらガヤガヤと声が聞こえたかと思うと、今度は大きな音を立てて乱暴に扉が開く。
「花音ーー、オレを裏切ったなぁ!!」
ノックもなしに飛び込むのが最近の流行なのだろうか? と思いつつも、乱入者にオレは驚いていた。怒声と共に現われたのは、数時間前に別れたばかりの織部凛だったからだ。
このパターンがつづくと嫌だなぁと、俺は心の中でまた溜め息をついていた。
やはり、世の中ってやつは不条理だ。
そうして場面は今回の最初に戻る。
先ほど乱入してきた織部凛とその前に闖入してきた石動舞奈、そしてここの主である冠城花音。少女の見た目には信じられないが、三人とも名立たる政治組織のリーダーで、新本の命運の一旦を握っている大物だ。
次々に飛び込んでくるこの少女たちが、とは本当に信じられないが・・・
もしかしたら、知らないうちに俺はパラレルワールドにでも迷い込んだんだろうか?
そうなら、帰りの手段を探さないとな。でも小説や漫画だと帰るの大変なこと多いよな・・・
おっと、また現実逃避しかけた。俺はこんなに精神面が脆かったんだろうか。たった数週間前のことなのだが、戦場を駆け巡っていた日々が何か遠く感じられる。
それに、新本に戻ってから俺のキャラがどんどん崩れているような気もする。一度気を引き締める必要があるかも知れない。
その大物三人が敵意剥き出し・・・とまではいかないが、険悪な雰囲気で対峙している。
いや、織部凛だけはガルルッという感じで、今にも噛み付きそうな勢いだ。石動舞奈はそっぽを向いて織部凛と目を合わせていない。冠城花音はやっかいだなぁ、という表情だ。
その蛇、蛙、蛞蝓(なめくじ)のような三竦み状態を破ったのは、痺れを切らした織部凛だった。
「ともかく、花音・・・俺との協定を反故にして、コイツと組むとはどういうつもりだ!」
冠城花音は「う~ん」と小さく唸ると、
「そんなこと言うけどなぁ、元々仲良うしとった三笠さんとこはもう落ち目やし、ここは勢いのある凛ちゃんのとこと懇意にしようかと思うたんやけどな・・・」
チラッと織部凛の方を見てから、そのまま続ける。
「凛ちゃん、由愛さま派なのにあんまり仲良うしてないやろ? かなりグチっとったらしいで。ついでに凛ちゃんは快斗さま贔屓の円ちゃんとはカンペキ喧嘩しとるしなぁ。三笠さんのことだけなら良かったんやけど、石山さんとこや舞奈ちゃんとも喧嘩になるなんて聞いてへんかったからなぁ・・・それにやで、舞奈ちゃんのお姉さんはできればウチ、敵にしたくないわぁ・・・」
今度は石動舞奈を一瞥すると、ちょっと困ったような表情を浮かべる。
「フンッ、ボクのお姉様になったクセに、ボクと遊んでくれないリンなんか嫌いだっ! ツィナお姉様だって気に入らないって言ってたんだからなっ!」
冠城花音は「ほらな」という表情をしていた。
ん? いやちょっと待て。
まさかと思うが組織対立の原因がそれか!? そんな理由なのか!? 一緒に遊んでくれないとかなのか!?
俺は――
→ 「政治舐めんな!」と、ブチギレる。
→ 「やれやれガキだな」と、呆れる。
→ 「それじゃ仕方ない」と、妙に納得する。
投票画面へ移動します。(投票期間:公開日から3日間)
http://www.wotaku.jp/vote/zokusei/
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ノラぬこ 著
イラスト みるくぱんだ
企画 こたつねこ
配信 みらい図書館/ゆるヲタ.jp
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この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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