韓国の自動車大手、現代自動車の新型車に雨漏りという前代未聞の欠陥が発覚し、業界関係者をあきれかえらせている。

 あまりにもお粗末なクルマに怒りの収まらない一部の購入者がソウル中央地裁に提訴する事態に発展。自動車メーカーとして製造の基本姿勢が問われるだけに、企業イメージを著しく低下させるのは間違いない。「欠陥車というよりも“欠陥企業”なのでは…」。業界内からはそんな厳しい声も聞こえてくる。

 「オープンカーの布に穴が空いていたんじゃあるまいし…。昭和30〜40年代の日本車でも雨漏りなんて考えられません」。日本の自動車メーカーの広報担当者は、半ばあきれながら皮肉まじりに、韓国・現代自動車の雨漏り問題に対してこう話した。現代自の新型SUV(スポーツ多目的車)「サンタフェ」で発覚した前代未聞の雨漏り問題。韓国の有力紙、朝鮮日報(電子版)によると、『新型サンタフェは今年4月に発売され、6万台近くが売れた。しかし、今年夏からトランクや後部座席に雨漏りするとの抗議が相次ぎ、論議を呼んでいた』という。

 現代自側は、8月に公式に謝罪し、無償修理を約束するとともに、保証修理期間を5年に延長した。しかし、購入者34人は10月17日、現代自を相手取り、雨漏りの欠陥がある車両を新車と交換するよう求める訴えをソウル中央地裁に起こした、と朝鮮日報は報道している。韓国のみならず、日本でも欧米でも自動車のトラブルは少なくなく、メーカー各社は重大事故を防ぐためそれぞれの監督官庁にリコール(回収・無償修理)を届け出ている。ただ、その大半は電子系統、ブレーキ関連で、雨漏りというのは異例だ。実際、自動車で雨漏りは起こるのか? 

 「天井にサーフボードなどを載せるためのルーフキャリアを付ける際、穴をあけたことで雨漏りする可能性はあるかもしれない。また、長期間にわたって使用し、さびが原因で穴ができることもあり得る」。日本車ならば昭和30〜40年代製でも雨漏りはあり得ないと話した前出のメーカー関係者はこう説明した上で「しかし、新車で雨漏りはありえないですね」と話す。また、別の国内自動車メーカーの関係者も「車体などの組み付け後、雨漏りがあったとしても出荷前に水をかける検査で見つかるはずだ」と述べ、検査工程のあり方など現代自のものづくりについて疑念を呈す。

 事実、現代自のクルマはこのところトラブルが頻発している。昨年11月、米環境保護局は現代自とグループの起亜自動車が米国で販売した自動車約90万台について、実際よりも高く燃費性能を表示していたとする調査結果を発表した。いわゆる燃費性能の“水増し”で、ガソリン1ガロン当たり最大6マイル(1リットル当たり約2・6キロ)に達していた。この問題は消費者の苦情で判明したもので、これほど大規模な誤表示は米国で初めてという。

 また、4月には米国で販売した乗用車など計約187万台をリコール。ブレーキを踏んでもブレーキランプが点灯しないほか、事故時にエアバッグが作動した際に、車の天井の一部が落下する恐れがあるという欠陥が見つかったためで、まさに“欠陥車”のオンパレードだ。現代自では今夏、経営側と労働組合側が賃金交渉をめぐって対立し、時限ストライキが頻発。生産台数が減少した影響で米国販売が落ち込み、10月の米新車シェア(占有率)は、9カ月ぶりに7・7%(昨年10月は8・5%)と低水準に陥っている。

 朝鮮日報によると、現代自の系列シンクタンク「韓国自動車産業研究所」は10月18日に発表した報告書の中で、現代自の高度成長が頭打ちとなり、来年からは厳しい時期を迎える可能性が高いと予測。身内でさえも現代自の先行きに「黄信号」を点灯した形だ。「日本で『雨漏りするクルマ』なんて評判がたったら、もう経営が立ち行かなくなる」。日本の自動車メーカーの担当者はこう言い放つ。そんな経営が立ち行かなくなるクルマを続けている現代自に未来はあるのか…。