【小林裕子、中野龍三】半世紀の間、幾度も存亡の危機を乗り越えてきた名古屋唯一の常打ち寄席「大須演芸場」(名古屋市中区)がまたも窮状に直面した。足立秀夫席亭(79)側の賃料滞納によって、民事執行法に基づき、建物の所有会社(名古屋市)に引き渡される強制執行手続きに入ったためだ。引き渡し期限は22日。所有会社の弁護士によると、来年1月末まで公演を継続し、同2月末に引き渡しを求める協議をしているという。

 足立さんは15日、朝日新聞の取材に「1月の新春興行を最後にして営業を終える。入場者は1日10人ほどで売り上げは1万~2万円。芸人への出演料を優先し、家賃は払えなかった。小屋はやめても芸人を連れて営業に回りたい」と話している。

 弁護士によると、建物の所有会社は2000年11月に所有権を取得。足立さんに月額30万円で貸与する契約を結んだ。07年ごろから賃料の支払いが滞り、足立さんを提訴。11年5月に、再び賃料を滞納した時点で賃貸契約を解除することなどを条件に賃貸を継続する調停が成立した。引き渡しを受けた後の運営主体や方針は決まっていない。

 大須演芸場は1962年に建てられた。木造2階建てで座席数は約250席。足立さんは73年に席亭を継いだ。演芸場ではかつて、古今亭志ん朝さんが窮状を救おうと独演会を開いたこともあった。また、ツービート時代のビートたけしさん、明石家さんまさんらも出演したことがある。