ここに注目! 「"ロボット兵器"を規制できるか」2013年11月14日 (木) 

津屋 尚  解説委員

攻撃の判断を機械が自ら行う「ロボット兵器」を規制するかどうかをめぐって、一部の通常兵器の使用を禁止・制限する条約の加盟国による初めての協議が、14日からスイスのジュネーブで始まります。津屋尚解説委員に聞きます。

Q)問題となっている「ロボット兵器」ってどんなものなんですか?

津屋)アメリカなどが開発を進めていてまだ完成したものはありませんが、高度な人工知能によって兵器が自分で攻撃の判断をする「自律型ロボット兵器」と呼ばれています。
ロボット兵器といいますと、アメリカが保有している「無人攻撃機」もその一つです。有人の兵器では近づけない危険な場所でも作戦ができるという強みがありますが、パキスタンでの対テロ作戦では多くの民間人が攻撃の犠牲になり、大きな問題になっています。これよりさらに進化した「自律型ロボット兵器」は、より大きな問題をはらんでいます。
 
Q)それはどういうことですか?

津屋)無人攻撃機は、“人間”が遠隔操作をして攻撃を判断しますが、「自律型ロボット兵器」は、目標の選定から攻撃の実行まで“人工知能”が判断し、人間の意思は介在しません。
 
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Q)ちょっと不気味な感じがしますね。

津屋)その通りだと思います。国際人権団体などは「人の生死にかかわる重大な判断を機械にさせてはいけない」と強く批判しています。
また、誤射や誤爆が増える可能性もあります。例えば、攻撃の標的が、戦闘服をまとわされただけの子供だったとしたら、機械は「子供だ」と判断できませんから、そのまま攻撃してしまうかもしれません。
さらに、自国の兵士が危険にさらされないということになると、国の指導者が安易に軍事攻撃に走り、戦争の敷居が低くなってしまうことも懸念されます。
 
Q)ジュネーブでの協議はどうなりそうですか?

津屋)過去の例をみますと、結論がでるまでには何年もかかるとみられます。議論の枠組みは、兵器を個別に指定して禁止してきた条約(特定通常兵器使用禁止制限条約)ですが、重要なのは、開発競争の末、ロボット兵器が多くの国々に核散してしまう前に加盟国による合意形成ができるのかどうかです。人工知能やロボットは本来、人間を手助けするためのものの筈ですが、ひとたび兵器となって人を攻撃するということに対しては、抵抗感を感じる人は少なくないと思います。これからロボット兵器の規制がどうなっていくか、注目していいただきたいと思います。