医療・介護など社会保障費の膨張が止まらない。厚生労働省が14日発表した2011年度の国民医療費は38.6兆円で過去最高を更新し、13年度には40兆円を突破する。「税と社会保障の一体改革」に基づき来年4月に消費増税を予定通り実施することになったが、介護などの給付費抑制策は修正が目立つ。世界がうらやむ長寿国家になった日本。経済の実力に見合った社会保障制度をつくる改革は早くも後退の懸念が出ている。
国民医療費は3年連続で1兆円以上増え、国民1人あたりで初めて30万円を超えた。厚労省推計によると、年金を含む社会保障給付費総額(自己負担除く)は25年度に149兆円。12年度比36%増え、同時期の国内総生産(GDP)の増加率(27%増)を大きく上回る見通しだ。
政府はこれまで、給付増で足りない財源を国債発行で実質的に穴埋めしてきた。だが国の借金は今夏1000兆円を超し、将来世代への先送りは限界だ。税と社会保障の一体改革に取り組んだのは給付と負担が釣り合わない状況を是正する狙いだった。
同改革で方向性を出した「増税」は、来年4月に消費税率を8%に引き上げることが決まった。だが、同時期に始めるはずだった給付抑制策は、早くも腰砕けの様相を呈している。
15年度からの実施を目指す介護保険改革。厚労省は9月、症状の軽い人向けの介護予防サービスを市町村に移しボランティアなどを活用して効率化する案を打ち出した。10年で1600億円程度の給付費抑制効果を見込んでいたが、与野党議員や市町村が反発。厚労省は14日、移管対象を日帰りの介護サービスなどに限る方針に切り替えた。給付抑制効果は1000億円程度に減る公算だ。
社会保障費の3割強を占める医療も同様の構図だ。高額医療費の改革では、高所得層の負担増を小幅にとどめる一方、低所得層の負担軽減策は広げた。与党の要請を受け入れたためだが、給付費は膨らんでしまう。
来年度予算編成の焦点である診療報酬改定。消費増税分の上乗せに加え、地域医療充実を名分に増額要求が強まる。医療機関の改革が進まないのに、国の財政がさらに傷む懸念がある。
成長重視を掲げる安倍政権は、法人税率下げや減反見直しなど時に踏み込んだ改革姿勢を示す。その一方、社会保障分野は慎重だ。社会保障費を毎年2200億円削った小泉政権の手法は採り入れず、分野ごとに効率化策を積み上げる道を選んだ。その政策決定の入り口でつまずいている。
来年は社会保障にとってもう一つの節目がくる。5年に1度の年金の財政検証だ。政府は公的年金の財政状況を今後約100年間にわたって検証することになっているが、改革の機運は乏しい。欧州先進国がすでに取り組んでいる65歳超への受給開始年齢引き上げといった抜本的な改革も素通りしそうな雲行きだ。
厚生労働省、厚労省、GDP
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