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青森市庁舎建て替え問題 市と議会側、争点定まらず難航

脆弱(ぜいじゃく)な耐震性が指摘される青森市役所

 青森市の庁舎建て替え問題が、解決の糸口を見いだせない状態となっている。市が防災の観点から現在地での建て替えを構想するのに対し、議会や商工団体関係者は「経済活性化の効果が乏しい」などと反発。10月下旬に初めてあった3者の意見交換会でも議論は平行線をたどった。今月11日の次回交換会に向け、有識者は「まずは論点整理が必要だ」と指摘する。(青森総局・橋本俊)

<市民からため息>
 JR青森駅前の複合商業施設アウガであった意見交換会には、市と議会、商工会議所青年部の関係者が出席した。市側は現在地で段階的に建て替える基本計画をあらためて説明した。鹿内博市長は「策定まで2年間話し合った。私が勝手に作ったものではない」と、これまでの議会答弁を繰り返した。
 これに対し、赤木長義市議(公明)は「市長が『筋を通してきた』とごり押しするなら、突っぱねるしかない」と強調。声を荒らげる場面もあり、傍聴した130人の市民からは、出口のない議論にため息が漏れた。
 建て替え問題では、基本計画の関連議案が市議会9月定例会で継続審査となり、設計にすら着手できていないのが実情だ。これまでのやりとりでは(1)庁舎の建設地(2)市の財政状況(3)青森駅周辺整備事業との連携(4)安全性、利便性への評価−の4点が課題として浮上するが、いずれも議論はかみ合っていない。
 特に現在地での建て替えには、議会や商工団体の反対派が「駅や中心商店街から遠く、経済波及効果に乏しい」と強く批判し、青森駅周辺への新庁舎建設を主張。鹿内市長と議会との折り合いの悪さも加わり、事態を深刻にしている。

<「計画は不十分」>
 建設地は安全性問題にも波及。議会側が求める港近くの青森駅周辺は県の予測図で津波による浸水が予想されるためだ。意見交換会では「大地震はあまりない。市長は不安をあおるな」「浸水エリアと認めると資産価値下がる」などの声も上がった。市が現在地での建て替え理由に「防災」を強調するほど反発を招く事態となっている。
 市側の対応も十分とは言えない。意見交換会は鹿内市長が「建設地の見直しも除外しない」と譲歩する形で開催された経緯がありながら、参加者の声に耳を傾けたとは言い難い。
 出席した商議所青年部の西秀記さんは、第三セクターが運営するアウガの経営難を挙げて「市が直面する課題は一つではない。まちづくりという観点から市の基本計画は不十分だ」と訴えた。
 今回のやりとりについて青森中央学院大の佐藤淳専任講師(政治学)は「基本計画に市民の声を反映しきれていないことが露呈した。議会側も言いたい放題になっている。時間をかけて合意形成を図るべきだ」と話す。

[青森市庁舎]窓口業務を行う第1庁舎は1956年に建設。東北6県の県庁所在地の主な庁舎で最も古い。市長室などがある第2庁舎も耐用年数の50年が迫る。2010年の耐震診断では、両庁舎ともに「震度6強以上の揺れで倒壊または崩壊の危険性が高い」と判定された。


2013年11月10日日曜日

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