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【神奈川】支出停止の「旗印」化に めぐみさん両親戸惑い
本年度、県が予算計上を見送り、横浜市も執行できる状況にないという朝鮮学校への補助金。川崎市は市議会の求めで学校視察をして支出を判断する。補助金停止を詰め寄る市議らが「支出を残念がる」として名前を挙げるのが、拉致被害者・横田めぐみさんの両親で、市内に住む横田滋さん(80)、早紀江さん(77)夫妻だ。実際はどのような思いなのか。夫妻の話に耳を傾けた。(山本哲正) ◆子ども責任ないめぐみさんは一九七七年、新潟市で行方不明に。十三歳だった。九六年に北朝鮮による拉致と判明。二〇〇二年、小泉純一郎首相(当時)の訪朝で拉致被害者五人が帰国した後も帰されずにいる。「何も罪のない、大切に育てた子どもを勝手に連れて行った。ものすごく許せない」と早紀江さんは憤る。 「拉致は悪」は滋さんも同じ。「政府が北朝鮮に制裁を主に対応することは必要と思う」との考えの一方で、日本国内に合法的に住む子どもたちに「何の責任もない」として、「差別する必要はない」と言い切る。 「間違った教科書で教えているとしたら、それを正してほしい。補助金は出してよいと思う」。滋さんは語る。 早紀江さんは「私は分からない。非常に難しい」という。「日本に住むのだから日本の学校に入って、皆で仲良くして…」。そう言いかけた早紀江さんは、「日本人も外国で日本語学校に通うことがある」という滋さんの言葉に、「だから! …拉致の問題がなかったら、何も言うことはないの」と苦悩を見せた。 「めぐみを早く帰してくれて、飢えたままにされている(北朝鮮)国民の方には食料品をたくさん送って、気持ちのいい関係になれば。それだけのことなんです」 早紀江さんは、父親から「差別なんていけない」と教わった。「『北朝鮮を憎んでいるか』とか聞かれる。私たちはそういうふうになりたくない。向こうの国民も人間らしい生活になってほしい」と思いを語る。 「私たちのことを思ってくださってのことで、悪気はないと思う」と解釈しつつ、夫妻は自分たちの名前を出して補助金を止めるよう求める動きに戸惑いをみせる。 ◆早期帰国こそ肝心夫妻の元に十月、国連人権高等弁務官から「解決が図れるよう、支援していく」との書簡が届いた。「国連が拉致問題だけじゃなく、強制収容所など北朝鮮で人権の問題が大変だと気付いてくれた」と語る早紀江さんは、日本政府にも期待を寄せる。 「早く帰して。この肝心なことこそ取り組んでほしい」 拉致がごく普通の家族の何を引き裂いたかが伝わる写真展「めぐみちゃんと家族のメッセージ」が十四〜十六日、川崎市川崎区の川崎地下街アゼリアのサンライト広場で開かれる。初日は午後一時から夫妻の講演もある。 <川崎市の朝鮮学校関連補助金> 市は、県による朝鮮学校の経常費補助を補完する形で、教材教具整備に1980年から計8700万円、研修費に98年から計600万円、保護者に89年から計2億4500万円の補助金を出してきた。本年度は、総額約840万円を組んでいる。 市は「子どもの権利条例」で民族、言語で少数の立場の子どもが自分の文化を享受、学習することを保障している。その立場からも保護者負担の軽減を図っている。日本の公立小学校に通えば義務教育で給食費などを除いて負担はない一方、朝鮮学校に通わせる場合の負担は補助を受けたうえで月9000円になっている。 PR情報
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