今大会、やねうら王は予選8戦で5勝し4位で予選通過した。磯崎氏はやね裏定跡の方法論が適切に機能したのはそのうち4戦と分析している。ただ、やねうら定跡のおかげで勝てたのは2戦だけといい、まだまだ多くの改良が必要と感じているようだった。
■思考量を増やして強敵に対抗
やねうら王はトーナメントの準決勝で、優勝した「ponanza(ポナンザ)」と当たった。ポナンザは前評判も高い強豪で、この対戦でやねうら王の本当の実力が問われることになった。R評価の平均値はポナンザがR200ほど上回るとみられていた。これはパソコン性能で比較すると2~2.5倍の差に相当し、同じ条件なら「9回対局して1回勝てるかどうか」(磯崎氏)と実力差は明らかだ。
ポナンザに対し磯崎氏が取った作戦は、通常の3倍の時間を使って将棋ソフトに思考させるという方法だった。局面を分析して次の一手を検討する思考量を増やし、R200の差を埋めようという狙いだ。これにより9回やって3回勝てるところまで勝率を引き上げようとしたのだ。
今回のトーナメントは持ち時間が2時間、それを使い切ると負けというルールだ。磯崎氏は序盤にあえて時間をつぎ込み、互角以上の争いに持ち込むことを狙った。ただ、後半になって持ち時間が足りなくなるというリスクもあるだけに「賭け」ともいえた。
実際、この作戦は功を奏した。やねうら王は序盤、優勢な状況をつくった。最強クラスの将棋ソフトと称されるポナンザも序盤は粗い展開をしがちとされる。やねうら王はそこにうまくつけ込んだのだ。
■弱い将棋ソフトにも工夫の余地
しかし、対局が進むに従ってポナンザの差し手はやねうら王の読みとずれ始めた。磯崎氏は対戦中に「これ、あかんヤツや!」と叫ぶなど、焦りの色もみえ始めた。会場で観戦していた筆者も、やねうら王はこのまま一気に崩れてしまうのではと思ったほどだ。
予想を覆してやねうら王はそこから驚異的な粘りをみせ、中盤まで善戦した。終盤になると指し手を計算する時間が足りなくなり、結局、敗れはしたものの、ブランクを感じさせない磯崎氏の開発手腕が改めて注目されることになった。
磯崎氏は4位になった今回のトーナメントを「偶然の産物も大きかった」と振り返る。ただ、「弱い将棋ソフトでも、序盤の攻め方や思考時間のバランスを変えることで勝率を最大化できるという考えを実証できた」と手応えを感じたようだった。プロ棋士と対戦する来春の第3回電王戦に向け、さらなる改良に意欲をみせていた。
コンピューター、将棋ソフト
海外メーカーに押されている白物家電市場で、シャープが人工知能「ココロエンジン」を武器に巻き返しに出ようとしている。ココロエンジンを使い“対話”という新しいアプローチで家電に親近感をもってもらう戦略だ…続き (11/15)
各種サービスの説明をご覧ください。
・3次元位置情報、新市場キャッチ
・ザインエレクトロニクス、HD画像を伝送できる半導体
・ホギメディカル、医療機器の稼働把握
・部品大手、試験コース増強 曙ブレーキ40億円投資
・蝶理、インドネシアに染色工場…続き