伊賀市上野桑町のビジネスホテル「ホテルキャッスルイン上野」で平成九年四月、従業員の水野省三さん=当時(48)=が刺殺され、金庫などから現金約百六十万円が奪われた事件で、強盗殺人の罪に問われた、元従業員で住居不定、無職久木野信 被告(44)の裁判員裁判の初公判が十四日、津地裁(岩井隆義裁判長)であり、久木野被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
検察側は冒頭陳述で、「競馬に大金をつぎ込み、犯行前日には借金は約百九十七万円に達していた」と指摘。また、事件発生の二年前、久木野被告がホテルに侵入して、金庫から約二百三十五万円を盗んでいたことを明らかにし、「前回と同じ手口で売上金を盗もうと計画したが、水野さんに発見され殺害した」と述べた。
弁護側は冒頭陳述で、「前回の窃盗事件と同様、誰にも見つからずに金を盗もうと考えた」とし、「ナイフは備えとして持っていただけで、最初は危害を加えるつもりはなかった」と主張した。
起訴状によると、久木野被告は平成九年四月十三日午前二時ごろから同二時三十五分ごろまでの間、ホテル一階で夜勤をしていた水野さんの腹などを刃物で数回刺すなどして殺害し、ホテルの売上金約百六十万円を奪ったとしている。
同事件は、二十二年の公訴時効撤廃を受け、捜査本部が設置された未解決事件で、容疑者が逮捕された初めてのケースだった。県警は二十三年五月、久木野被告から口腔(こうくう)内細胞の提出を受け、ホテルに残された血の付いた軍手を鑑定。軍手からは水野さんと久木野被告のDNA型が混ざったDNA型が検出され、久木野被告の逮捕につながった。
冒頭陳述の後、報道陣の取材に応じた水野さんの姉の森昭子さん(77)は「久木野被告の姿をまともに見たのは初めてで言葉もない。あれだけのことを省三君にしたと思うとすごくつらい」と話した。
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