17日までは全国糖尿病週間だ。生活習慣病に関わる2型糖尿病では、来春、尿に余分な糖を排出する新薬がゾクゾクと登場する見込み。糖尿病治療に新風を吹き込むとの期待は高いが、そもそも従来の飲み薬はどうなのか。単に医師任せで飲んでいると、「隠れ低血糖」といった事態も起こりかねないという。専門医が警鐘を鳴らす。
【高容量SU薬で】
2型糖尿病では、血糖を抑制するインスリンの働きが悪くなり、インスリン分泌も低下する。そのため、主な治療薬として、インスリン分泌を促進する「スルホニル尿酸(SU)薬」が長年使用されてきた。薬価も1錠10−20円程度と安いのが利点。
ところがSU薬は、血中の糖分が少なくなって起こる「低血糖」を引き起こしやすい。日本糖尿病学会専門医の「しんクリニック」(東京都大田区)の辛浩基院長が指摘する。
「SU薬を処方するときには、たとえば『グリメピリド』(一般名)の1錠0・5ミリグラムの少量を他の薬と合わせるのが基本です。しかし、医師によっては、1錠3ミリグラムの高容量を処方しているケースがいまだにある。結果として、ご本人が気づかない『隠れ低血糖』の状態に陥り、心筋梗塞などによる死亡リスクを高めていることがあるのです」
【血糖値測定を】
隠れ低血糖の症状としては、別項を参考に。この状態を放置すると、心臓の要となる冠動脈にダメージを与えるだけでなく、低血糖状態が悪化して突然意識を失うようなことも起こる。さらに、身体の自然な仕組みで、低血糖を解消するために食欲が増し、糖尿病による食事制限を守ろうとしても難しく、体重増加にも結びつく。
「SU薬を高容量飲んで体調が思わしくない人は、食事前に近くの医療機関を受診して、血糖値を測ってもらいましょう。自己測定器を活用するのも一考です」(辛院長)
専門医の薬のさじ加減は、そうでない医師とは異なるということだ。
【ファーストチョイス】
糖尿病の治療薬は、SU薬以外に、インスリン抵抗性改善薬、食後高血糖改善薬、速効型インスリン分泌促進剤に分類され、製薬各社の薬も多数ある。
中でも、2009年に登場したインクレチン関連薬は、膵臓(すいぞう)に働きかけて、血糖値が高いときだけインスリン分泌を促し、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑える。注目度は非常に高かったが、薬価も1錠180−200円程度と高い。糖尿病治療薬は、長期間服用することが多いため、安価である方が患者にとってはメリットが大きい。
「専門医は、肝臓での糖の生成を抑制する『ビグアナイド(BG)錠』を使用することが多い。低血糖を起こしにくく1錠9・9円程度で、患者さんへの負担が少ないからです。世界的にも治療のファーストチョイス。もちろん、高齢者などで使用が難しい人もいますが、他の治療を組み合わせて対処できます。また、早期の段階で飲み薬とインスリン注射を組み合わせたBOTという治療法もあり、選択肢は確実に広がっている」と辛院長はいう。
【隠れ低血糖チェック】
□朝、シーツがじっとりと汗でぬれている
□朝方や食事前に心臓が高鳴り動悸(どうき)がする
□食事をすると動悸が治る
□緊張していないのに、手のひらや脇の下などが汗ばむ
□最近疲れやすくなった