特集ワイド:安倍政権のNHKでいいの? 経営委員会、「お友だち」人事に批判
毎日新聞 2013年11月14日 東京夕刊
◇政治家としての品格の問題 製作現場の萎縮を懸念
「みなさまのNHK」が「安倍政権のNHK」に染まってしまう……そんなことがあるのだろうか。NHKの最高意思決定機関、経営委員会に4人の委員が新たに決まった。いずれも安倍晋三首相と近い関係の人物とされる。「NHKと政治」の問題点を考えてみた。【江畑佳明】
政府がNHK経営委員の同意人事案を衆参両院に提示した先月25日。菅義偉官房長官は定例記者会見で「首相に近い人をあえて選んだのか」と問われ、「自らが信頼し評価する方にお願いするのはある意味では当然」と語り、「お友達人事」を半ば認めた。人事案は8日の衆参本会議で賛成多数で同意され、新体制が決まった=表。
作家の百田尚樹氏は昨秋、月刊誌「WiLL」の対談で安倍氏と意気投合した。安倍首相も百田作品のファンで、総裁選の応援に「本当に勇気づけられた」と感謝している。百田氏は自身のツイッターで「他国が日本に攻めてきたら、9条教の信者を前線に送り出す」などと述べ、物議を醸したこともある。
長谷川三千子氏も熱心な首相支持者だ。9月に最高裁が出した民法の非嫡出子相続規定についての違憲判決に対し、産経新聞への寄稿で「国連のふり回す平等原理主義、『個人』至上主義の前に思考停止に陥った日本の司法の姿を見る思いがします」と批判。持論を展開した。このほかJT顧問の本田勝彦氏は安倍首相の元家庭教師で、首相を囲む経済人が集う「四季の会」メンバー。また中島尚正氏が校長を務める海陽中等教育学校は、四季の会主力メンバー、JR東海の葛西敬之会長が設立に尽力した。
実は安倍内閣成立後、2、6月にも上田良一氏ら4人の経営委員が就任したが、「お友達批判」はなかった。なぜか。「6月はまだ衆参でねじれ状態だった。人事案が批判されれば参院選前にダメージになるため露骨な人選は避けたのではないか」と話すのは、元NHK政治部記者で椙山女学園大(名古屋市)元教授の川崎泰資(やすし)さんだ。「参院選でねじれが解消し、安倍首相の意向が通りやすくなった」と分析する。