虚構の環:第3部・安全保障の陰で/5止 頭もたげる「再処理国際化」構想

毎日新聞 2013年06月30日 東京朝刊

会談前に握手する枝野幸男・経済産業相(当時、右)とポネマン・米エネルギー省副長官=経産省で2012年7月、米国大使館提供
会談前に握手する枝野幸男・経済産業相(当時、右)とポネマン・米エネルギー省副長官=経産省で2012年7月、米国大使館提供

 ◆虚構の環(サイクル)

 ◇「六ケ所延命の方便」

 昨年7月24日、来日した米エネルギー省のポネマン副長官は枝野幸男経済産業相(当時)と会談した。冒頭以外は非公開。取材班は会談内容を記した内部文書を入手した。ポネマン氏は「六ケ所村(再処理工場)やもんじゅ(高速増殖原型炉)の技術を利用すれば(日本は)国際的核燃サイクルに貢献できる」と提案。枝野経産相は「連携と協力を進めていく」と応じた。

 国際的核燃サイクルはA国の使用済み核燃料をB国に運び一定期間冷却(中間貯蔵)、C国で再処理してプルトニウムとウランを取り出し新燃料を作ってA国に渡すといった構想だ。米国は自国で再処理を実施していない。一方で原発の新規導入国は増えており「各国が再処理に乗り出すと、軍事転用可能なプルトニウムが拡散する。日本で集中的に処理してほしい」と考えるポネマン氏のような高官がいるのだという。

 日本側の事情はどうか。外務省幹部は「参加国が多いとコントロールは難しい。飛びつく話ではない」、経産省幹部も「海外の使用済み核燃料を六ケ所に持ち込むことになる。地元に受け入れられない」と語り、現実味はない。それでも多くの場面で「国際化」が取り上げられる。

 今年3月、東大(原子力国際専攻)の田中知(さとる)教授と久野(くの)祐輔委嘱教授らの研究会が報告書をまとめた。中国、ロシア、カザフスタン、ベトナムなどと国際的核燃サイクルを構築する構想で、概要は昨年3月、内閣府原子力委員会の小委員会で報告された。報告書には「一国ベースでは後退せざるを得ない核燃サイクルについても、多国間により対応することで議論の前進が期待される」と記載されている。「六ケ所を残すための研究か」。記者が尋ねると、田中氏は否定したが、久野氏は「確かに(六ケ所への)危機感はあった」と答えた。

 同様の研究は、民主党の細野豪志幹事長が原発事故担当相時代に設置した私的研究会でも取り上げられた。代表を務めた遠藤哲也・元外務省科学技術審議官が昨年5月、細野氏に提出した中間報告書には「六ケ所を利用した使用済み燃料の処理・返還の可能性を含め国際化を進める」とある。

 内閣府関係者は「日本にとって、国際化とは六ケ所を『延命』させるための方便」と解説した。

       ◇

 六ケ所は順調に稼働しても40年間で3万2000トンの使用済み核燃料しか処理できない。国内発生予定量の約8割に過ぎず、他国分を受け入れる余裕はない。

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