虚構の環:第3部・安全保障の陰で/2 再処理継続、米は後ろ向き

毎日新聞 2013年06月26日 東京朝刊

 ◆虚構の環(サイクル)

 ◇経産省「新増設」で対抗

 再処理工場で生まれる、軍事転用可能なプルトニウムを使うため、プルサーマル発電の再開を米国に約束した翌日の昨年9月13日、大串博志内閣府政務官(当時)はフロマン米大統領副補佐官(同)と会談した。

 核物質は「国籍主義」が取られるため、再処理はウランの生産・燃料加工国である米国の管理下に置かれる。かつて日本は毎年事前に米国の許可を得て、その量だけを再処理していたが、1988年の日米原子力協定で一定量まで事実上自由に再処理できる「包括同意」が認められた。フロマン氏は「核燃サイクル政策が一貫性を持ったものであるとの前提で包括同意を付与したのであり(前提が崩れれば)見直しの必要が生じるかもしれない」と述べた。88年協定はサイクルの生命線。オバマ大統領側近が見直しを示唆した事実は重く、内閣府関係者を驚かせた。

 一貫性とは、再処理で取り出したプルトニウムを原発の燃料として使うこと。民主党政権が会談の翌日に発表予定の「原発ゼロを目指すが核燃サイクルは推進」では一貫性を失う。フロマン氏は「プルトニウムに関する問題を(今後)しっかりと議論したい。その側面(核燃サイクル)については発表を控えてほしい」と要求した。大串氏は「サイクル推進は青森県との約束。青森の理解と協力が得られなくなれば、最悪の場合(青森に)搬入している使用済み核燃料の搬出を求められ、即座に全原発の再稼働が不可能となりかねない」と拒否した。

     ◇

 88年協定を巡る交渉が始まったのは82年。交渉を担当した元外務省科学技術審議官の遠藤哲也氏(78)が振り返る。「『日本にプルトニウムを自由にさせるのは危ない』と、国防総省、米原子力規制委員会が反対した。反対論を抑え87年1月に仮調印にこぎ着けたら今度は議会が反対した」。米議会の事実上の承認が得られたのは、交渉開始6年後の88年4月。88年協定の有効期限は2018年7月だからあと5年しかない。外務省幹部は「時間が残されていない」と焦燥感を漂わせる。

 韓国の存在も影を落とす。23基の原発を持つ韓国は16年改定の米韓原子力協定で再処理を認めさせたい考えだ。遠藤氏が予想する。「核不拡散の観点から米国は韓国には認めないだろう。2年後に日本が協定を改定するのだから包括同意の維持は簡単ではない。原発が減りプルサーマルも高速増殖炉も動かなければ、包括同意を失い再処理できなくなるかもしれない」

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