虚構の環:第3部・安全保障の陰で/1(その2止) 再処理、砂上の楼閣
毎日新聞 2013年06月25日 東京朝刊
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◇「六ケ所稼働率ダウンを」 原子力委、異例の提言
訪米した民主党の大串博志内閣府政務官(当時)がプルサーマルの再開を約束してから半年。長年、核燃サイクル政策を推進してきた内閣府原子力委員会で厳しいやり取りがあった。
3月26日の原子力委定例会議。電力10社で作る電気事業連合会の小田英紀原子力部部長は「16〜18基でのプルサーマル導入を目指す」と述べた。本命だった高速増殖炉は実現しておらず、再処理で取り出したプルトニウムを燃やすには、プルサーマルしか選択肢はない。事業者側は東京電力福島第1原発の事故前から「16〜18基で実施する」と説明しており、小田部長の発言はこれに沿ったものだ。
鈴木達治郎委員長代理は「実現するかどうか非常に不透明」と指摘した。元々立地自治体の反発が強く、プルサーマルの実施例は福島第1原発3号機(廃炉決定)を含む4基にとどまり、現在はすべてストップしているからだ。鈴木氏は「個人的提言」と断ったうえで「(プルトニウム)利用の見通しを明確にし、その見通しの上で再処理をする方向で検討してほしい」と発言した。「プルトニウム利用」とはプルサーマルのこと。「燃やす見通しの立った分だけプルトニウムを取り出すべきで、順調に燃やせないなら、その分再処理のペースをダウンすべきだ」という意味だ。内閣府関係者は「国が再処理工場(青森県六ケ所村)の稼働率を落とすよう勧告したのは初めて。それだけ厳しい状況だ」と指摘する。
再処理工場が稼働すると年800トンの使用済み核燃料が再処理され、約8トンのプルトニウムが抽出される。工場の稼働年数は40年だから計約320トンのプルトニウムが生み出される。これは長崎型原爆5万発以上に相当する量だ。
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プルサーマルには大きな問題がある。使用済みになった燃料(使用済みMOX燃料)は熱量が高く、通常のウラン燃料に比べ取り扱いが難しい。毒性も強く使用済みウラン燃料用に設計された六ケ所村再処理工場では再処理できず、別の工場、つまり「第2再処理工場」が必要だ。第2工場を建設できない場合、使用済みMOX燃料はプルサーマルを実施した原発の敷地内に置き続けるしかない。