習近平指導部1年 少数民族対応が課題11月15日 7時19分
中国で習近平指導部が発足してから15日で1年になりますが、中国西部、新疆ウイグル自治区では、先祖代々続く墓地が取り壊しを迫られるなど、文化や慣習を否定したと受け止めるウイグル族の反発が強まっていて、習近平指導部にとって少数民族への対応が大きな課題になっています。
新疆ウイグル自治区にある地方都市、石河子では、イスラム教の慣習に従い200年前からウイグルの人々の遺体が埋葬されている墓地があり、去年、地元政府が墓地の取り壊しを決めたことに住民の反発が強まっています。
地元政府は、墓地周辺を開発地区に指定し、漢族の企業が320億円を投じてショッピングセンターやホテルを建設する計画ですが、これに対して、先月、1000人を超えるウイグル族の住民が抗議集会を開き、抗議は今も続いています。
また、10年以上、伝統的なウイグル医学の専門医として患者を診察してきたアブド・ミジティさんは、ことし9月、開業医の資格試験を受けたところ、これまですべてウイグル語だった試験問題の一部が中国語に変わっていたため、中国語が分からず不合格になりました。
地元の衛生当局は、NHKの取材に対して、合否は試験の点数次第だとしていますが、アブド・ミジティさんは「このままではウイグルの医療は発展せず、ウイグル人の医師もいなくなる」と話しています。
このように、みずからの文化や慣習が否定されたと受け止めるウイグル族の不満が高まっていて、習近平指導部にとって少数民族への対応が大きな課題になっています。
中国の約6分の1を占める新疆ウイグル自治区
中国西部に位置する新疆ウイグル自治区は、面積が165万平方キロメートルと省や自治区の中で最も大きく、中国のおよそ6分の1を占めています。
中国が建国される前の1930年代から40年代には、ウイグル族などが一時的に2つの国を作りましたが、1949年に人民解放軍が進駐し、1955年には現在の新疆ウイグル自治区が成立しました。
新疆ウイグル自治区には、ことし世界遺産への登録が決まった天山や古代、中央アジアを横断する東西交易路だったシルクロードなどがあり、2200万人余りの人口のうち少数民族のウイグル族が半分近くを占めています。
ウイグル族はトルコ系の遊牧民族の1つで、国内で1000万人余りとされる人口のほとんどが新疆ウイグル自治区に集中し、アラビア文字を使うウイグル語を話すなど独自の文化を持っています。
また、ウイグル族の大部分はイスラム教を信仰し、モスクでの礼拝を欠かしません。
しかし、中国で9割以上を占める漢族は、客として訪れたイスラム料理店でお酒を出すよう求めたり、地元当局が男性にひげをそり女性には顔を隠すブルカの着用を禁止したりするなど、文化の違いを理解しようとしない姿勢に不満が高まっていたとされています。
さらに、新疆ウイグル自治区は、石油の産出量が全国1位、天然ガスが全国2位となるなど地下資源に恵まれていますが、開発された資源はパイプラインなどで沿海部に運ばれるほか、自治区のトップである書記などの要職は漢族が占めており、不平等だと指摘されています。
この結果、新疆ウイグル自治区の1人当たりのGDP=国内総生産は、去年の時点で最も高い沿海部の天津の3分の1程度にとどまっており、届け出がなければ宗教活動を認めないといった地元政府の締めつけや経済格差などに不満を募らせたウイグル族がここ数年、抗議行動を活発化させています。
このうち、2009年には自治区の中心都市ウルムチの中心部で、住民らの抗議デモが大規模な暴動につながり、多数の車両や商店が放火されるなどして政府の発表でおよそ200人が死亡したほかけが人も多数出ました。
さらに、ことしに入っても、抗議行動が相次ぎ4月に南部のカシュガル地区で住民と地元当局が衝突し、住民や警察官ら合わせて21人が死亡したほか、6月には東部のトルファン地区で刃物を持った集団が警察施設などを襲い住民や警察官ら合わせて35人が死亡しました。
新疆ウイグル自治区では、東トルキスタン・イスラム運動が中国からの分離独立を目指して活動を続けているとして、中国政府は、チベットなどと共にウイグルを「核心的な利益」と位置づけ、大量の治安部隊を投入して監視や取り締まりを強化しています。
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