社説

軽減税率の導入/議論加速させ年内に結論を

 消費税増税に伴う軽減税率の導入に向けた自民、公明両与党の検討が本格化してきた。
 消費税については、税率が高くなるほど所得の少ない世帯の負担が重くなる「逆進性」の問題が指摘されている。
 低所得者対策として、前民主党政権は減税と現金支給を組み合わせた「給付付き税額控除」を検討していた。が、政権交代後は、食料品を中心に税率を低くし負担感を緩和する軽減税率が軸になった経緯がある。
 来年4月の8%引き上げ時には低所得者対策として、住民税の非課税世帯約2400万人に現金1万円か1万5千円が支給される。だが、これは1回だけの措置で、2015年10月に予定される10%アップ時の対応は決まっていない。税率2桁台に備え、恒久的な対策が要る。
 自公両党はことし1月、10%引き上げ時に軽減税率の導入を目指すことで合意。年末までに、制度の中身について結論を得ることを確認している。
 このことは政権与党同士の合意にとどまらず、国民に対する約束でもある。
 両党は軽減税率導入の年内決定に向けて、議論を加速させなければならない。
 与党の税制協議会は12日、関係団体などから聴取した意見を基に中間報告をまとめた。主な意見としては、全国知事会が「混乱が起きかねない」と軽減税率導入に慎重な検討を求め、日本新聞協会は「新聞は民主主義を支える公共財だ」として、導入とその適用を要望した。
 一方で中間報告は税収減や対象品目を選ぶ難しさ、中小企業の事務負担増など、導入に向けた「ハードル」も列挙した。
 参考にしたいのは、消費税に相当する付加価値税の税率が20%前後と高い欧州の例だ。
 ほとんどの国で軽減税率を導入しており、食料品、水道水をはじめ、生活に欠かせないものに適用されている。書籍類と共に新聞も民主社会の健全な発展に不可欠として、税率は数%かゼロとなっている。
 高い税率に対する国民の理解を得るため、各国が暮らしに及ぶ影響をいかに抑えるかに正面から取り組んだ結果といえる。わが国でも知恵を絞りたい。
 ただ、公明党が導入に積極的なのに対し、自民党は導入に向けたハードルの高さを理由に慎重なのが気掛かりだ。
 もっとも、自民党は7月の参院選で「複数税率の導入を目指す」として、軽減税率導入を掲げた。税率が10%という2桁台に乗る時をとらえ、公約通り導入に踏み切るべきだ。
 なぜなら、増税には国民の理解が欠かせないからだ。共同通信社が10月に実施した世論調査では79%の人が軽減税率導入に賛成した。国民の間に広がる、そうした認識をないがしろにしてはなるまい。
 まずは早期に導入を決め、対象品目について方向性を打ち出したい。品目選びを円滑に進め企業の事務負担増に対応するためにも、時間的余裕を確保し準備に万全を期す必要がある。

2013年11月14日木曜日

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