韓国から飛行機で4時間の距離にある東南アジアの友好国フィリピンは、現在台風30号による過去に例のない大規模な被害で苦しんでいる。現時点で1万2000人が死亡・行方不明となり、数十万人が被災した。しかし韓国では政府も国民もそれほど大きな関心を払っていないようだ。2005年に米国でハリケーン「カトリーナ」による甚大な被害が発生したときや、01年の9・11テロの際には韓国の政府と国民は大きな関心を示したが、今回はそれとは大きく異なっている。
12日午前、韓国外交部(省に相当)ではフィリピンの被災者を支援するため、趙兌烈(チョ・テヨル)第2次官主宰で官民合同の海外緊急救護協議会の会合が開かれた。フィリピンで台風被害が発生してからすでに4日が経過していた。会合ではフィリピンに500万ドル(約4億9800万円)を支援することや、駐フィリピン大使館の職員と、医療スタッフ20人、救助隊14人、韓国国際協力団(KOICA)4人、外交部2人の計40人からなる緊急救護隊(KDRT)を現地に派遣し、医療および救助活動の支援を行うことなどを決めた。前日の午後にも同じく支援に向けた会議が多国間外交調整官主宰で行われたが、このときに派遣が決まっていた人員の数はこれよりも9人少なかった。いずれにしても、国全体が悲しみに包まれた友好国への支援としてはかなり小規模だ。
メディアや一般国民もフィリピンでの台風被害にそれほど大きな関心があるようには感じられない。台風が通過してから2日が過ぎてようやく本格的な報道が始まったが、それも現地に住む韓国人の安否に関する情報に集中していた。米国で発生した9・11テロやハリケーン「カトリーナ」による被害、東日本巨大地震と津波が発生したときは、韓国でも終日現地の模様が中継され、募金活動なども各地で行われていたが、今回はそのような目立った動きもない。
フィリピンは1949年に米国、英国、フランス、台湾に続き韓国が5番目に国交を結んだ64年続く血盟国だ。また韓国戦争(朝鮮戦争)には7420人の兵士を派遣してわれわれと共に血を流し、今も国連軍司令部の一員として担当者が韓国に常駐している。現在のアキノ3世大統領の父は従軍記者として韓国戦争に来ていた。韓国との貿易総額は昨年115億ドル(約1兆1500億円)を記録し、韓国からフィリピンへの投資額は10億ドル(約996億円)に上る。フィリピンを訪れる韓国人は年間100万人で、これはフィリピンを訪問する外国人の数としては1位だ。現地に住む韓国人は9万人を上回り、韓流も根付いている。東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の中では人口がインドネシアに次ぐ2位で、最も親韓的な国とされている。
もし同じような災害が米国で起きていれば、韓国政府と国民は今のように無関心な態度を示しただろうか。7900人以上が死亡・行方不明となったハリケーン「カトリーナ」のときは、韓国政府は首相が直接関係部処(省庁)の閣僚を集めて対策会議を招集し、財界や宗教界の関係者を招いた懇談会も複数回にわたり開催した。韓国メディアは1週間近くカトリーナによる被害状況を報じ、多くの国民がテレビを通じて現地の状況を見守った。
世界最強国であると同時に韓国の同盟国である米国と、今回被害に遭ったフィリピンでは、韓国にとって取るべき対応が異なるのは当然との声もあるだろう。しかし苦しみにあえぐ友好国に対する人道支援や関心という点からすれば、国によって関心の度合いを変える理由はない。しかもフィリピンは最近韓国にとって大きな貿易相手として浮上したASEANの中心国である。ASEANとの貿易総額は今や米国をも上回っている。自然災害に苦しむ友好国への関心と支援という点で、国によって異なった態度を取るのはもうやめるべきだ。