経済
JR四国、安全投資惜しまず 赤字経営と年齢偏在、北海道と共通
(11/10 13:37)
特急の車両火災やレール幅異常の放置などJR北海道でトラブルが続発する背景には、鉄道事業の赤字経営や社員の年齢構成のいびつさなどがあると指摘される。しかし、JR四国(高松)は同様の環境ながら、北海道より早く導入した高速の振り子特急を安全運行させているのをはじめ、保線分野を含めて大きなトラブルを起こしていない。その理由を知ろうと、10月下旬、四国を訪れた。
木製の大屋根が特徴のJR高知駅のホームに、特急「南風(なんぷう)」が入線した。1990年から定期運行を開始した、カーブで車体を傾ける世界初の振り子気動車特急。JR北海道の「スーパー北斗」のお手本にもなった。
高知を出発し、土讃(どさん)線を20分も走ると四国山地の縦断区間に入る。きつい勾配や連続するカーブは、北海道の石勝線と似ている。カーブが続いても速度を落とさずに車体を傾けて走り、揺れに不安は感じない。香川県に抜けた後、瀬戸大橋を渡り、JR西日本が管轄する岡山まで走った。
高知市内で会ったベテラン運転士は、鉄道事業の赤字経営、民営化前後に採用を抑えたことで40代の中堅社員が極端に少ない点など「JR四国と北海道で抱える事情は似ている」と指摘した。
ただ、JR北海道で問題視されている本社と現場の意思疎通が不十分な点に関しては「JR四国には支社がないので、保線所などの現場と本社の距離感は近い。それがJR北海道との違いかな」と話す。
JR四国は、855キロの全路線のうち、採算ラインとされる輸送密度(1キロ当たりの1日平均利用者数)8千人以上の区間は25%しかない。ここ3年は経営安定基金(2082億円)の運用益で鉄道事業の赤字を埋めようにも、埋めきれないほど状況は厳しい。
JR四国は北海道以上に合理化を進め、保線や大規模な車両検査はもとより、JR北海道では自社職員が3日ごとに目視で行う車両の点検や3カ月ごとの綿密な検査も子会社に委託。車両検修担当者は子会社に出向している。社員の年齢構成は、40代の7・2%に対して50代が53・6%に上るなどいびつなことから、技術継承がスムーズに進まず、旧国鉄時代を知るベテランが安全運行を支えているのが現状という。
一方、JR四国は2011年度から幹線の枕木のコンクリート化に着手。今春時点のコンクリート化率は54%で北海道より13ポイント高い。直線など木製が多く残る区間も数本に1本コンクリート枕木をはさみ、レール幅が広がりにくいようにした。
いったんは子会社に委託した保線作業の一部を昨年、安全重視のために自社直轄に戻した。レールのゆがみや高さを調整する「マルチプルタイタンパー」と呼ばれる自走式の機械を使う作業だ。子会社委託から2年後に、JR四国労組が検証したところ、経験の浅さから現場の技術水準が落ちたことが分かり、JR四国は「計画から施工、確認までを一体的に行う方が良い」と判断した。
また、11年の石勝線特急脱線炎上事故の原因となった車輪の異常摩耗について、JR四国は独自の対策を持つ。異常摩耗をセンサーで自動検知する装置を瀬戸大橋近くの線路脇に備え、車輪の異常な音を測定すると、その列車の車輪を臨時検査し修正する仕組みだ。
トラブルが多く、維持費がかさみがちな旧国鉄型車両についても、JR四国はこれまでに410両を廃車し、新型に置き換えた。特に特急車両の旧国鉄型は20年前に全廃。北海道で旧国鉄型特急39両を今も使っているのと対照的だ。さらに、北海道で昨年まで原則的に交換しなかった特急気動車のエンジンも、随時、交換している。(経済部 米林千晴)<北海道新聞11月10日朝刊掲載>
経済記事一覧
15日
- 東電、原発再稼働で1千億円黒字 収支計画原案で明らかに (02:23)
- NTT、ビッグデータ事業を加速 医療分野で活用 (02:13)
- 米国、コメ除き関税全廃を要求 TPPで甘利氏に、日本拒否 (02:03)
- 金融緩和で景気支える 次期FRB議長の公聴会 (01:27)
- NY株、もみ合い FRBの金融緩和継続への期待感 (00:57)
14日
- 米9月貿易赤字8・0%増 4カ月ぶり高水準 (11/14)
- NY円、99円後半 日欧の株高などを背景 (11/14)
- カネボウ、白斑被害で休業補償 通院による減収分 (11/14)
- ユーロ圏GDP0・1%増 7〜9月期、回復力弱く (11/14)
- 自民、転作補助金の大枠了承 収穫量にも応じ支給 (11/14)
- パナソニック、鉛電池増産へ 静岡で、エコカー向け強化
(11/14)
- 三菱自、電気自動車を大幅値下げ 最大3割でてこ入れ
(11/14)
- ネット配信課税、来春間に合わず 海外からの音楽、映画など
(11/14)
- 大手銀行、純利益リーマン後最高 9月中間、株高と景気回復で
(11/14)
- 東京円、99円台後半 円売りドル買い優勢に (11/14)
- サラミ熟成、シッカリ エゾシカ肉、食べやすく
(11/14)
- 13年の大卒初任給0・8%減 高卒も1・2%減少 (11/14)
- 中国・青島、自由貿易区設立へ 日中韓FTAにらむ (11/14)
- 東証、半年ぶり高値 米緩和継続で1万4800円回復
(11/14)
- みずほ集中審議、参院も21日に 暴力団融資問題 (11/14)
- 東証、3週間ぶりの高値 米金融政策やGDP好感 (11/14)
- 東京円、99円台前半 円買いドル売り先行 (11/14)
- FRB、異例の緩和策継続 次期議長「景気回復支える」 (11/14)
- GDP年率1.9%増、成長減速 7〜9月期、輸出はマイナスに
(11/14)
- 北見北交と北見タクシー合併 来年4月、車両は市内の半数超 (11/14)
- NY円、99円前半 リスク回避でドル売り (11/14)
- NY株、2日ぶり最高値 米個人消費期待で70ドル高 (11/14)
- 焼き鳥「串鳥」 札幌に新工場 今後3年で最大8店出店へ (11/14)
- 半導体基盤、北海道・千歳事業所に集約 ミツミ電機、来年1月にも本格生産
(11/14)
- JR北海道、鉄道運輸収入3.9%減 10月、特急運休響く (11/14)
-
- 24時間
- 週間
- 月間
-
- 「原発輸出やめて」 北海道新聞東京懇話会で安倍首相夫人 消費増税も異議
- 「仕事有能」も業者と公然飲食 上司が注意 収賄容疑で逮捕の北海道旭川市課長
- 北海道内、日本海側中心に雪 中山峠ではスキー場オープン
- 旭川市課長を逮捕 北海道警 市発注工事で100万円収賄容疑
- 大リーグ、田中獲得に不安の声も 米報道、登板過多を懸念
- 寝台特急「北斗星」15年度廃止へ 北海道新幹線開業で 「ブルートレイン」消える
- 「殺す」2度学生はねる 殺人未遂容疑 小樽署、42歳男を逮捕
- 北海道内で大雪 厚田48センチ、新篠津42センチ JRに運休や遅れ
- 旭川市課長を逮捕 北海道警 市発注工事で100万円収賄容疑
- 北海道内、大荒れ続く ハウス倒壊も 札幌、稚内、網走で初雪
- 「原発輸出やめて」 北海道新聞東京懇話会で安倍首相夫人 消費増税も異議
- 企画/特集
-
道内主要企業 2014年春の採用計画
- 関連リンク
-
道新適職フェア