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図書館の果たすべき使命(11月10日)


 活字離れと言われて久しい。それはアナログの活字で、一方ではデジタル活字という形を変えた情報入手の欲求はますます膨大化してきている。
 いわき総合図書館は今秋で開館6年を迎えた。先日、市内の小学生たちが先生の引率で図書館見学に来ていた。利用する本が図書館に受け入れられ、棚に並べられ、検索機で欲しい本が探せるシステムなどを学習したはずだ。9月末に就任した清水敏男市長は市民との約束に「全ての学校図書館に『図書館司書』を配置する」との項目を掲げた。子どもたちにとって誠に歓迎すべきことである。ぜひ、実現を目指していただきたいが、その際に学校間格差を生じさせないように努めてほしい。
 読書の意義を知って、さらに図書館を活用したい。希望の本がなかった時に図書館は県立図書館、大学図書館さらには国立国会図書館と図書館同士のネットワークを活用して所蔵館を探すとか、購入を検討するとか、対応してくれる。絶版のために、長いこと探していた思い出の本に再会できるという喜びも味わえる。
 昨今、図書館のサービスは貸し出しにのみ重点が置かれているように思われがちだが、もう一つ大きなサービスを提供している。レファレンスサービスというものである。つまり、図書館の資料を使って利用者の質問や疑問に対応してくれるサービスである。館内には「相談コーナー」などと表示されていることがある。国立国会図書館の「レファレンス協同データベース」は全国の図書館からの質問例などで構成されていて、頼もしいシステムである。
 図書館に頼らずとも、インターネットで検索できる時代にはなった。ただ、図書館には、情報を得るにはどのようなキーワードを入力すると、求める情報に迅速・的確に到達できるかの方法を体得しているプロの司書がいる。
 図書館司書は(1)資料収集・提供の自由(2)利用者の秘密を守る(3)全ての検閲に反対する-という精神を身につけて図書館運営を支えている。司書の働きを重視せずに、民間営利企業などに図書の管理を代行させたりすると、施設や蔵書が優れていても本来の図書館機能が失われる恐れがある。
 一般に公共図書館の魅力の一つは地域資料などの充実である。図書館は常に地元誌・紙の切り抜きをはじめ、民家にうずもれている資料の発掘などにも心掛けている。貴重な資料を活用する一環として、いわき総合図書館は「澤村勘兵衛 生誕400年 絵図でみる小川江筋」展を来年1月18日まで開催中である。このような動きは、営利を度外視したサービスであることも忘れてはいけない。
 インドの図書館学者ランガナータンが提示した図書館学の五法則の一つ「図書館は成長する有機体である」との基本的目標を再認識したい。(玉手匡子、磐城桜が丘高同窓会「桜丘会」会長)

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