日本の安倍晋三首相は11日、首相の諮問機関である「安全保障と防衛力に関する懇談会」の会合を行い、日本の防衛力の拡充に向けた論議を本格化させた。今回の会合では、ミサイル防衛システムの強化や、敵の基地を攻撃できる能力の保有、新型早期警戒機や無人偵察機、水陸両用車の導入などについて話し合われた。日本政府は今年末、新たな防衛政策を盛り込んだ「新防衛大綱」をまとめ、来年初めには緊急事態が発生した場合に司令塔の役割を担う「国家安全保障会議(日本版NSC)」を設置する。さらに来年下半期には、集団的自衛権の行使を正式に宣言する見通しだ。日本は戦争を禁じる「平和憲法」を改正しなくても、事実上「戦争ができる普通の国」に変ぼうしようとしているというわけだ。
■新防衛大綱と武器輸出
安倍首相は懇談会での論議を基に、今年末までに新防衛大綱をまとめる予定だ。この中には、攻撃用の部隊である海兵隊の新設や、これに関連する兵器の導入などが含まれている。また、垂直離着陸輸送機「オスプレイ」や水陸両用装甲車の導入も明記される。防衛省はまた、約740台ある自衛隊の戦車を300台に減らし、関連予算をミサイル防衛システムの向上や、尖閣諸島(中国名:釣魚島)の防衛用の装備の購入に充てるとしている。このほか、武器輸出を規制してきた「武器輸出3原則」も事実上破棄し、防衛産業を輸出産業として積極的に育成する方針だ。
■日本版NSC、緊急事態発生時に司令塔の役割
日本政府は来年1月、緊急事態が発生した場合の迅速な意思決定を目的に「国家安全保障会議(日本版NSC)」を設置する。最近、関連法案が衆議院を通過した。同会議は米国の国家安全保障会議(NSC)をモデルとした組織で、外交や安全保障などに関する政策の樹立や、意思決定に関する司令塔の役割を担う。
■敵の基地攻撃をめぐる論議も
安倍首相はこれまで「ほかに手段がない場合、敵の基地を攻撃することは、憲法が認める自衛権の範囲に入る」と主張してきた。北朝鮮が日本を狙って核ミサイルを発射するような状況が把握されたときには、先制攻撃を行うしかないという論理だ。日本はすでに、大陸間弾道ミサイル(ICBM)への転用が可能なロケットを開発している。首相の諮問機関の懇談会でも、敵の基地を攻撃する能力の保有について話し合われた。日本は北朝鮮への対応を大義名分として掲げているが、これは中国を視野に入れた側面もある。
■憲法改正ではなく迂回的な手段で
安倍首相は来年、集団的自衛権の行使を宣言する見通しだ。同盟国が攻撃された場合、自国が攻撃されたものと見なし、相手国を攻撃するというわけだ。安倍首相は、戦争を禁じる憲法第9条を改正するのではなく、これまでの憲法解釈を変更し、集団的自衛権を行使できる根拠とする意向だ。すでに憲法解釈の問題を担当する内閣法制局長官を交代させるなど、事実上その準備を終えた状態だ。だが、連立与党である公明党との関係や、国民の反発を考慮し、集団的自衛権の行使の宣言は来年下半期ごろに行うとみられる。