'13/11/15
高級酒人気で酒米足りない
新酒の仕込みシーズンに入った中国地方の酒造会社が、高級な日本酒の原料になる酒米の確保に苦労している。夏の猛暑で生育が良くなかった上、高級酒の人気が高まったためだ。生産調整(減反)により、需要増に柔軟に対応できない問題点を指摘する声もある。
「全国の酒造会社で取り合いになっている」。八幡川酒造(広島市佐伯区)の畠崇製造部長は厳しい表情で話す。人気の大吟醸酒の生産増のため、高品質で知られる兵庫県産の酒米「山田錦」の仕入れを2倍に増やそうと業者に打診。「余分がない」と断られた。
「手に入った原料でいい酒を仕込む」と畠部長。別の銘柄に使う広島県産の「八反錦」の調達量も計画を1割強下回る見通しだ。
新酒の仕込みが始まる酒どころ東広島市。「生産の計画を見直さないといけない」。ある杜氏(とうじ)は嘆く。広島県産の八反錦と兵庫、広島県産の山田錦を使うが、酒米が足りない。「以前はもっと供給に余裕があった…」と戸惑う。
猛暑で産地が受けた打撃は大きい。安芸高田市の羽佐竹農場は、酒米の出荷量が計画より2割強減。松川秀巳社長は「粒が小さく、くず米が多い。この30年で初めて」と明かす。
需要が増えても素早く生産を増やせない、構造的な問題もある。酒米は主食用米と同様に減反の対象にされており、農家は国が示す数量目標の枠を超えて作りにくい。
兵庫の山田錦を多く使う旭酒造(岩国市)の桜井博志社長は「減反が農家の意欲を削ぎ、需要に応える弾力性を損ねている」と指摘する。同社でも、本年度の山田錦の調達は発注量に約2割届きそうにない。
【写真説明】山田錦で純米大吟醸酒を仕込む旭酒造の従業員(岩国市)