韓国への修学旅行を、1973年以来40年間続けている高校の存在が注目を集めている。
日韓緊張が続く中だけに、ネット上ではこうした取り組みを「韓国寄り」とみなし、罵倒をぶつける人も少なくない。しかし学校側では、交流の成果が「いつか花開く」ことを信じているという。
話題となっているのは、福岡市にある九州産業大学付属九州高校だ。幕末の思想家・吉田松陰の言葉にちなむ「卓然自立」を校訓に掲げ、創設50年の歴史を持つ。
2013年11月、そんな九州高校の「修学旅行」が、日韓のテレビ局や全国紙で大きく報じられた。同校の韓国への修学旅行が「40年」という節目を迎えたからだ。
「途切れぬ交流、韓国修学旅行40回で表彰へ」(読売新聞)
「『関係悪い時こそ交流を』 40回目の韓国修学旅行」(TBS)
「九州高校 韓国修学旅行を40年間継続」(韓国・聯合ニュース)
1973年といえば、故・朴正煕元大統領による軍事独裁時代だ。当時国内では韓国に限らず、海外への修学旅行自体ほとんど例がなかったが、当時の理事長による「国際交流」への強い思いから、全国に先んじて開始に踏み切る。以来、クーデターなどによる韓国内の混乱、日韓関係の変動などの障害はありつつも、関係者の努力により、この修学旅行はほぼ毎年欠かさず続いてきた。
中でも主眼は73年当時から続く、ソウル・世宗高校との「若者同士の交流」だ。両校ではこの40年間、修学旅行のたびに交流会を開くなど絆を保ち、この10月には正式に姉妹校としての調印も行った。
4泊5日の旅行初日・11月11日には、「40年」の交流を記念し、九州高校一行を迎えた仁川国際空港では、韓国観光公社によるセレモニーが催された。日韓の報道陣も駆けつけ、政治の軋轢を超えた心温まるエピソードとして、広く報じられた。
他方ではしかし、日韓の緊張が修学旅行という場にも影を落とし始めている問題もある。
韓国への修学旅行に参加する高校生は年間2万713人で(文科省調べ、2011年度時点)、行き先としては5本の指に入る「人気国」だ。しかし2012年以来冷え込みが続く日韓関係、「嫌韓」ムードの高まりもあり、各地で韓国への修学旅行取り止めの動きが出ている。一部保護者からの反対などによるもので、ネットを通じて「抗議」が行われた事例もある。
今回、九州高校の取り組みに対しても、ネット上では激しいバッシング、また学校側への中傷めいた批判が見られた。
九州高校に、その思いを尋ねた。男性教頭は、穏やかな口調でJ-CASTニュースの取材に答えた。
「報道されたことで、かなりご意見はいただいています。ただ、学校としては安全にも配慮し、しっかりとした趣旨を持ってやっていることです」
同校普通科の修学旅行では、行き先を韓国と国内から選ぶことができるようになっている。そのため「行きたくない」生徒が無理矢理行かされるようなことはないし、また韓国との交流は長年の取り組みとして理解を受けており、今回の修学旅行に対しても保護者から不安の声が上がることはなかったという。
「国際情勢の変化はどうしてもありますし、交流の『成果』も、なかなか目に見えるものではありません。しかし、若者同士の交流で一人一人の心にまかれた種は、いつか花開いていくと思います」
11日のTBS番組では、仁川空港に到着した生徒たちの姿が放映されている。「(韓国の高校生と)テレビとかアイドルとかの話ができたらいいなと思ってます」と語っていた。
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