トップページWEB特集

WEB特集 記事一覧

  • 読み込み中

RSS

WEB特集

加速する“未婚社会”どう備える

11月14日 17時55分

村石多佳子記者

恋愛に受け身な男性のことを指す「草食系男子」ということばを聞いたことがあると思いますが、最近はさらに、そもそも恋愛に興味がない「絶食系男子」ということばも登場しています。
ここまではいかなくても、実際に今、異性と一度も付き合ったことのない人や、結婚を選択しない人が増えています。
近い将来、到来すると予想されている「未婚者急増」の時代。
報道局遊軍プロジェクト生活情報チームの村石多佳子記者が解説します。

恋愛しない男性たち

「女性と一緒にいるよりも1人でいたほうが楽だし、1人でいることにあまり抵抗がないんです」
神奈川県で一人暮らしをしている大学3年生の男性のことばです。
男性はインターネットのソーシャルメディアでは女性の友人が多くいますが、これまで実際に女性と交際した経験はありません。
そんな男性が楽しみにしているのは、1人暮らしの男子が集う料理教室です。
休日の夜、同じ20代の男性どうしで料理を作って一緒に食べます。

ニュース画像

「自分が結婚するということに対するイメージがかけらもない」
「結婚しなくても、今の時代では別に人生の失敗ではない」
料理教室の参加者たちは、同性だけで過ごす気楽さが心地良く、将来、結婚するつもりはないと口をそろえていました。

恋愛しない若者が増加

最新の民間の調査で、恋愛をしない若者が増えていることが分かってきました。
リクルートブライダル総研が20代の男女1200人余りを対象にしたアンケートでは、男性は半数近くのおよそ45%が、「一度も女性と交際した経験がない」と回答しています。

ニュース画像

調査に当たった落合歩研究員は「想像以上に若い人たちが恋愛に対して消極的だったことに驚きました。『傷つきたくない』『失敗したくない』というような思考が表れているのではないか」と話していました。

大学が“婚活”講座?

このまま結婚しない男女が増えれば少子化がさらに進んでしまう。
危機感を抱いて新たな取り組みを始めた大学があります。
九州大学の助教、佐藤剛史さんは、去年から恋愛に必要なスキルや結婚の意味を学ぶ講義を始めました。
きっかけは、佐藤さんが1年生の学生200人余りを対象に行った恋愛に関する調査でした。
その結果、男女とも7割以上の学生に恋人がいないことが分かったのです。
「あまり人に心を開けない」「思っていることをすぐに言えない」
学生たちのことばからは人とコミュニケーションを取ることが苦手な若者の姿が見えてきました。
このため佐藤さんは講義の中で男子学生と女子学生をペアで座らせ、異性との会話の仕方を練習させています。

ニュース画像

佐藤さんは「今の社会では結婚しない自由、子どもを産まない自由も認められていると思いますが、もし社会に出た後、結婚して子どもを作りたいという人生を選ぶのであれば、今のうちからどういう人生を選ぶかを考え、その人生を実現していく力を身につけてほしい」と話していました。

ニュース画像

今後も上昇する未婚率

気になるデータがあります。
50歳の時点で1度も結婚したことがない人の割合を示した「生涯未婚率」の推移です。
1950年代には1%台でしたが、どんどん上昇し、2010年には男性は19%、女性は10%まで達しています。
国の推計では今後もさらに上昇を続け、2030年には男性は30%、女性も23%に達し、実に男性の3人に1人、女性の4人に1人が、一度も結婚しない時代が来ると予想されているのです。

ニュース画像

自治体が異例の調査

すでに未婚化が深刻になっている自治体も出てきています。
15歳以上の住民のうち、男性の50%、女性の42%を「未婚者」が占めている東京・新宿区です。
未婚化が進めば、さらに少子化に拍車がかかることになります。
事態を重く見た新宿区では、今年9月から未婚者を対象に異例の聞き取り調査を始めました。
調査に応じた未婚者たちの口からは、結婚を選ばない、または選べないさまざまな理由が聞かれました。

ニュース画像

「自信がないというのがあるかもしれない。自分の収入で食べさせていけるのか、相手が満足してくれるかなど、相手のことを考えると疑問が出てくる」(39歳・飲食店アルバイト男性)
「ここまで結婚しないでいると、逆に結婚したら、今度は不自由が多くなるのではないか」(55歳・未婚男性)
このほか、「結婚よりも自分の生活を優先させたい」という声もありました。

“未婚社会”に備えるために

新宿区では、未婚者が増え続けることで、これまで無かった行政負担が新たに生じると考えています。
単身者は同居人がいる人と比較して生活習慣の乱れなどから健康不安を抱えるリスクが2倍程度高まることが調査から見えてきたからです。
調査メンバーとなっている家族社会学の専門家、宮本みち子さんは「多くの現役の年齢の方たちが配偶者がいない状態で1人暮らしをしている。その方たちが高齢期に入ったときに、医療費をはじめ新しい行政課題というのが出てくるはずです。今のうちからそれを意識して行政が対策を検討することが求められている」と話していました。

ニュース画像

結婚するかしないかは個人の自由であり、外部から強制されるものではありません。
その一方で、このまま未婚化が進むと少子化がさらに進む一因ともなります。
これまで基本モデルとされてきた「夫婦と子ども」4人家族という形が大きく変わるなかで、新宿区が将来を見据えて調査を始めたように、社会全体の仕組みを考えていく必要があると思います。