アンドリュー・ロス・ソーキン「30分のアニメで学ぶ『経済サイクル』という奥義」

2013年11月11日(月)
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「なぜなら、実際には貨幣の『流通速度』というのは大して起こっていないからだ。貨幣の流通速度と言われるものの大半は、信用の増加である。それは貨幣流通速度とは非常に異なるもので、かつ、それが起こる理由も貨幣流通速度の変化の理由とは大きく異なる」。

「貨幣流通速度とは、貨幣が循環する速度をけん引する何らかの曖昧な力を指すが、まったくそういうものではない。消費とは貨幣(若干の流通速度を備えている)または信用から生み出されるものであり、その各々がどのように形成され、名目GDP(国内総生産)を生み出すうえでどのように消費されているをかを理解すべきだと思う」。

これは分かりにくく聞こえるだろう。実際のところわかりにくい。しかし、彼のビデオではもっと単純明快に説明されている。

たとえば彼は、経済サイクルはたったの2種類しかないのに、投資家はいつもそれを見落としてしまうようだと語る。

「サイクルは、5年から10年のものと、75年から100年のものがある。ほとんどが揺れを感じているが、日ごととか、週ごととか、目を近づけすぎるために、多くの場合、それをサイクルとして認識できない」とビデオで指摘している。

2018年、私たちは金融危機から解放されているのか

では、現在の経済サイクルはどの位置なのだろうか?

ダリオ氏は、はっきりとは言わないが、おそらくわれわれは長いレバレッジ解消の波の後半にいるようだ。ダリオ氏によれば、それは、そんなに悪いことではない。

「大事なのは、紙幣の刷りすぎによる、受け入れがたいほどの高いインフレを招くのは避けることだ。これは、ドイツが1920年のレバレッジ解消期にやったことだ。政策立案者たちが適切なバランスを実現すれば、レバレッジ解消は、それほど過激なものとはならない。成長率は低いが、債務負担は低下する。それは、すばらしいレバレッジ解消法だ」

さらに彼は、「債務負担が低下して経済活動が正常に戻るには、約10年か、それ以上かかる。それが“失われた10年”と言われるゆえんだ」と指摘する。

ということで、彼の授業で勉強したならば、金融危機がすっかり解消されたと宣言できるのは、少なくとも危機の10年後である2018年ということになるだろう。

(翻訳:松村保孝)

アンドリュー・ロス・ソーキン:ニューヨーク・タイムズの金融専門記者。同紙ブログ「DealBook」エディター。『リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上・下)』著者
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