アンドリュー・ロス・ソーキン「30分のアニメで学ぶ『経済サイクル』という奥義」

2013年11月11日(月)
upperline

そこではお金がないのに借金してモノを買うことについて、こう説明している。

「お金を借りるということについては、単純にお金を使うことを先延ばしにすると考えればいい。なぜなら、本質的に、将来の自分からお金を借りなければならないからだ。そのお金を将来返済するために、自分が稼ぐよりも少ないお金しか使えないような期間を作り出している。」

緊縮政策の説明はこうなる。

「借り手が新たな借金をやめて過去の負債を返済し始めると、借金の負担が減ると思うだろう。しかし、実際には逆のことが起こる。ひと1人の消費は他者の収入となるので、借金をやめれば所得が下がり消費が減る。」

ダリオ氏のこうした取り組みは、経済を学ぶ学生と専門家双方からの注目を集めている。先月の公開以来、すでに30万人以上がこのビデオを見ており、元財務長官のヘンリー・M.ポールソンJr.は、このYouTubeのリンクを何人もの友人に送っている。

「業界の常識」に惑わされない独自の哲学

このアニメーションのファンである元FRB議長、ポール A.ヴォルカー氏は、「型破りだが、これは、経済が実際にどう動いているか、そして、これまで過剰な信用が繰り返し作り出され、最終的に破壊的な影響をもたらしてきた歴史に光を当てるものだ。この分析は、中央銀行と政府が債務不履行とレバレッジ解消の痛みを緩和する、実践的な方法だ」と語る。

ダリオ氏の会社の昨年の運用益が、若干精細を欠いた点は気に留めておくべきだが、しかし彼とジョージ・ソロスは比較され、近年では哲学王のような存在となっている。

ダリオ氏は、他人よりも常に物事を明瞭に見ることができると考えている。たとえば、彼の会社には「原則」といわれるハンドブックがあり、そこに定めれれた210のルールに則って会社を運営している(その中には、「自分が意見をもつ権利を得るだけのことをしたかどうか自問しなさい」といったものがある)。この独特の経営スタイルによって、彼の会社はカルトのように言われてきた。ダリオ氏はこれは、経営手法の成功を過少評価する見方だと不快感を示している。

これまでの経済学者と違い(ダリオ氏は、その仲間ではない)、彼は多くの経済学者が依存し、ウォッチし続けているような統計には注目しない。そして、需要と供給といった基本理論にもフォーカスしないばかりか、金融政策立案者が単に貨幣供給を操作することでインフレをコントロールできるとも考えていない。

彼は、経済学原理のコアとなる「MV=PQ」の公式に目もくれない。(The Street.comで簡単に経済学のおさらいをすると、「Mは貨幣供給、Vは流通速度、Pはモノとサービスの価格、そしてQはモノとサービスの量だ。この公式は、Vが一定でMが増加すると、QかPのいずれかが上昇するはずだということを示している。」)

経済サイクルを認識できない投資家

ダリオ氏は、高く評価されているミルトン・フリードマンの開発したこの理論は、誤った結論を導くものだと語る。このテンプレートの公式が誤解を招きやすくしている、とメールで指摘した。

previous page
2
nextpage



underline
アクセスランキング
昨日のランキング
直近1時間のランキング
編集部お薦め記事
最新記事