トップ下に君臨していたメスト・エジルの存在。
モウリーニョは香川との接触についてこう説明してくれた。
「それが、レアル・マドリーでは常にプレーできるわけではないということだった。当時の私の第1選択肢はメスト・エジルだった。私はそれも隠さずに正直に彼に伝えたんだ」
2011-2012シーズン、エジルはレアル・マドリーにおいて代えのきかない選手になっていた。トップ下で自在に攻撃を操り、クリスティアーノ・ロナウドのゴールの大半をアシストした。
モウリーニョは、そんなエジルの代役として香川を考えていたのかもしれない。
あるいは、どちらかを右サイドに回し、共存させる考えもあったのかもしれない。もちろん、今となっては分からないことだ。
「結果的にカガワはマンチェスター・ユナイテッドを選んだ。もちろんユナイテッドもビッグクラブだが、恐らく彼はユナイテッドの方が出場機会があると考えたのだろう。彼がマドリーに来ることはなかったが、私はできることをトライした。彼のプレースタイルが好きなんだ」
そう話すモウリーニョに後悔は感じられなかった。やることはやり、伝えることは伝えたのだろう。とてもさっぱりとした話し方だった。
サッカー“以外”の人間的な部分に迫ったインタビュー。
香川を誘いながらも、エジルが第一選択肢だという本心を少しも隠すことなく伝える点は、実にモウリーニョらしい。
「ポジションが保証された選手などいない」、あるいは「調子のいい選手を出す」と言うことだってできたはずだからだ(実際にほとんどの監督はそうやって選手を誘っている)。
考えていることをストレートに伝えるモウリーニョの人間性は、選手獲得の交渉の席でも出ているのだと、妙に納得できた。
このインタビュー中に発された彼の言葉が、あまりにも真っすぐなものだったからだ。
Number841号(11月14日発売)に収録されたインタビュー(『聖書とジョブズと私が守るべきもの』)では、ピッチ上のサッカーについてはほとんど語られていない。
選手やチームや戦術については、記者会見でも知ることができる。普段はインタビューを受けないモウリーニョと直接交渉をして得た、クラブ広報すら同席しない貴重な時間だ。彼の人間的な部分に迫る対話がしたかった。
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