そこが聞きたい:特定秘密保護法案 三木由希子氏
毎日新聞 2013年11月13日 東京朝刊
参考になるのは米国の国立公文書館です。日本とは比べものにならないくらいスタッフに権限と予算がある。大統領令による秘密指定の解除についても、一定の条件のもとですが、審査する権限もあります。日本の国立公文書館は独立行政法人ですが、あまり権限がなく、来たものを受け入れるだけで、行政文書の管理にほとんど口を出せていません。特定秘密保護法案が出てきたことをきっかけに、政府の秘密をどうやって管理していくかということを真剣に考え、議論を深めていってほしいと思います。
◇聞いて一言
前任地の静岡支局管内には、地震が高い確率で起きるため「最も危険」とされる中部電力浜岡原発がある。静岡県警本部長は「電源を壊せば容易に最悪のメルトダウンを引き起こすことが分かってしまった」と福島第1原発事故のテロ対策への影響を懸念していた。法案によれば、テロ防止を理由に、原発の安全対策の検証に必要な情報まで特定秘密に指定されないとは限らない。何より、情報はいずれ公開されるという緊張感を行政の当事者が持たなくなれば、深刻な腐敗を招くだろう。
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■ことば
◇1 特定秘密保護法案
安全保障に関する情報のうち「特に秘匿が必要であるもの」を担当閣僚らが特定秘密に指定。漏えいした公務員らを10年以下、漏えいをそそのかした者を5年以下の懲役とする。自衛隊法で漏えいを懲役5年以下と定めている防衛秘密は、法案が成立すれば特定秘密に含まれる。
◇2 情報公開クリアリングハウス
1980年に市民団体「情報公開法を求める市民運動」として発足、99年の同法成立に伴い名称を変更した。関連法規や条例などの調査研究、制度改善の提案や、情報公開請求する市民らの活動を支援している。福島第1原発事故では関連情報を公開請求し、政府の対応などの公文書をインターネット上で公開している。
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■人物略歴
◇みき・ゆきこ
1972年、東京都生まれ。横浜市立大文理学部卒。卒業と同時に情報公開法を求める市民運動のスタッフとなり2011年から現職。