そこが聞きたい:特定秘密保護法案 三木由希子氏
毎日新聞 2013年11月13日 東京朝刊
◇指定解除、ルール化を−−情報公開クリアリングハウス理事長・三木由希子氏
特定秘密保護法案=1=が衆院で審議されている。立法の動きを追ってきたNPO法人「情報公開クリアリングハウス」=2=の三木由希子理事長に、政府の秘密取り扱いのあるべき姿について聞いた。【聞き手・吉富裕倫】
−−法案のどこが問題ですか。
秘密を保護するために罰則を強化することと、何が秘密かを指定し管理することとを分けて考えています。法案には秘密の管理についての明確な規定がありません。「特定秘密」に指定された情報の指定の解除、保存や公開の基準を定めた具体的な条文がないため、政府に説明責任を果たさせる歯止めが全く利かない点が問題です。こうした法案の欠陥が放置された状態で罰則が強化されれば、ただでさえ情報公開に後ろ向きな政府が、自分にとって都合の悪い情報を闇から闇へと葬り去っていく恐れがあります。
−−政府は法案の「別表」で秘密の範囲を示しており、「知る権利」への配慮規定を盛り込めば十分だと主張しています。
自衛隊法の改正を受けて指定が始まった防衛秘密がどのように管理されているのか、情報公開請求して調べてきました。防衛秘密は2007〜11年に新たに約5万5000件が指定されたのに対し、解除は1件しかありません。部局ごとの内訳はすべて黒塗りで、どの部局が何件秘密に指定したかの情報すら非開示でした。こうした運用が法案成立によって外交、スパイ活動防止、テロ防止の分野に広がれば、国民に対する説明責任がますます果たされなくなります。法案で秘密の範囲を定めた別表の文言は、例えば「防衛に関し収集した電波情報、画像情報その他の重要な情報」などと幅広く、事実上政府の判断で何でも指定できるようになっています。
−−法案の背景には米国の要請があります。
米国は情報を共有するため秘密を守ってほしいと日本に要請しました。その一方で、米中央情報局(CIA)元職員、スノーデン容疑者の暴露によれば同盟国の首脳や、広範な市民までもが通信傍受の対象になっているとみられます。政府が制約なく市民を監視することが起こりうることを示したわけで、法案が成立すれば、日本でも同様の事態を助長する環境を作るでしょう。
−−政府の秘密情報の管理のあり方をどう見ますか。