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ものづくり進化論(日経産業新聞)

トルコへ原発輸出、三菱重に影落とす巨額賠償問題
編集委員 安西巧

(3/4ページ)
2013/11/11 7:00
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 そのCNNCは10月半ば、中国国有企業である広核集団(CGN)と共同で英国南西部ヒンクリーポイントの原発新設計画(仏アレバ社製の欧州加圧水型炉〈EPR〉を2基建設、23年稼働予定)に参入することが明らかになった。CNNCは東芝傘下の米原発大手ウエスチングハウス(WH)社から技術導入して中国国内で原発建設を進めている。

2012年から運転停止中のサンオノフレ原子力発電所は廃炉が決まった(米カリフォルニア州)
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2012年から運転停止中のサンオノフレ原子力発電所は廃炉が決まった(米カリフォルニア州)

 これまで英政府は安全保障上の問題から中国企業の原発事業参入に難色を示していたが、福島第1原発事故などをきっかけに英国内の原発プロジェクトから撤退する企業が相次ぎ、暗礁に乗り上げるケースが続出したことから従来方針を転換。中国企業に門戸を開くことになった。

 ヒンクリーポイント原発は当初、英電力・ガス会社セントリカ社とフランス電力公社(EDF)の共同事業だったが、今年2月に「コストと建設計画が不透明」との理由でセントリカ社が撤退。残ったEDFが新たなパートナーを探していた。同原発の総事業費は160億ポンド(約2兆5400億円)。EDFが45~50%、仏アレバ社が10%をそれぞれ出資予定で、新たに加わった中国企業2社の出資比率は計30~40%になる見込み。

 このほか、エーオン、RWEのドイツ電力大手2社が昨年3月、英国の原発事業から撤退。両社合弁で設立した英原発会社ホライズン・ニュークリア・パワー社(英国内2カ所で最大6基の原発新設を計画)は、日立製作所が昨年11月、約890億円で傘下に収めた。

■原発離れ進む欧州の電力市場

 また、英国中部セラフィールドで最大360万キロワット(2~3基)の原発新設を計画していた英ニュー・ジェネレーション(ニュージェン)社は10年に仏GDFスエズ社とスペイン電力大手イベルドロラ社、英スコティッシュ・サザン・エナジー社が共同出資で設立した原発会社だったが、11年にスコティッシュが撤退。ここに来てイベルドロラも保有株(50%)をすべて東芝の子会社WHに売却する方向で交渉が進んでいる。東芝はGDFスエズの保有株も一部買い取り、百数十億~200億円を投じて年内にもニュージェンを傘下に収める方針。

 欧州の電力ビジネス市場ではフランスを除く各国の企業が原発から距離を置き、その空白を日本や中国のアジア勢が埋めている構図が浮かび上がる。日立は3.11以降、日本国内での原発新設が見込めなくなったため、英国内で4~6基の新設計画を持つホライズン社買収に踏み切った。だが、建設費だけで投資額は約2兆円と巨額なため、17~18年に予定している着工までに、現在100%保有しているホライズン社株を投資ファンドや電力会社に売却して出資比率を50%未満に下げたい考えだ。

 ただ、欧州勢は及び腰なうえ、中国勢も本来はメーカーのため製造が主体。「ものづくりのうまみが無いし、ただでさえ日中合弁は難しい」と関係者は話す。ホライズン社株の売却が難航すれば、日立は過大なリスクを抱え込むことになる。「自動車メーカーが需要確保のためバス会社やタクシー会社を買うようなもの。うまくいく可能性は小さい」(重電担当アナリスト)との指摘もある。

 原発メーカーのリスク管理に大きな影を落としているのが、三菱重工が遭遇している米国での巨額賠償問題だ。同社は09~10年に米カリフォルニア州にあるサンオノフレ原発に交換用の蒸気発生器を納入したが、その配管が摩耗し12年1月に放射性物質を含む微量の水が漏れ、稼働を停止するトラブルがあった。

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