「つながり依存」暴走 LINEの関係、現実にも波及
全国の中高生に急速に広まっているスマートフォン(多機能携帯電話)向けの無料通信アプリ「LINE(ライン)」。インターネット上でのすれ違いが現実社会でのいじめにつながりかねないだけに、仲間外れを恐れ、スマホを手放せない子どもも少なくない。新しいツールとどう向き合ったらいいのか。
「あいつなんで(やりとりに)入ってこないの」「死んだんじゃないの」
東京都内の高校1年生の男子生徒はスマホの画面に目を奪われた。毎日、友人約10人とLINEでやりとりしていたが、今夏、スマホを自宅に置き忘れたまま泊まりがけのアルバイトに出かけた。返信できなかったのは3日。その後返信したが、応答はない。夏休み後に登校すると、男性生徒の机が廊下に出されていた。
全国webカウンセリング協議会(東京都)には、こうした相談が多数寄せられる。「既読無視」「スタンプ連打」などのLINE独特のトラブルへの対応を尋ねる人もいるという。
協議会の安川雅史理事長は「入浴中もトイレ中も、LINEをやめられない中高生は多い」と指摘する。夜中までLINEを使って寝不足の生徒が保健室にあふれ、本当に具合が悪い生徒が寝るベッドがないという学校もあるという。
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LINE依存の子どもをどう救うか。福岡市のNPO法人「子どもとメディア」の古野陽一専務理事は「子どもとの間に溝をつくらず、適切な使い方を一緒に考える関係をつくってほしい」と大人に呼びかける。
古野さんが最も重視するのは、子どもにスマホを与えるときに、どんな目的と範囲で使うのかを話し合っておくことだ。「使う時間や場所などのルールは親が一方的に課してはいけない。それは『約束』ではなく『命令』になってしまう。ルールを守る理由を子どもが考えなくなり、守られない」と注意を促す。
既にLINEに子どもがのめり込んでいる場合は、LINEの仕組みを子どもに尋ねたり、親も利用したりすることも有効だ。親子で会話しながら使うことで、大人の感覚で「これって危ないんじゃない?」と諭すことができるという。
会ったことのない人とも24時間つながり続けるLINEでは人間関係の整理が容易ではない。古野さんは「他人との交友を断つのは大人でも困難なのに、多感な子どもにはなおさら。『LINEではつきあいが悪い』と思われるぐらいがちょうどいい」と指摘する。
【ワードBOX】LINE(ライン)
インターネットサービス業のLINE(東京)が2011年に運営を始めた無料アプリ。ネットを通じて無料で通話やメッセージのやりとりができる。文字やイラストを使った多彩なやりとりが手軽にできることから人気を集め、2年余で利用者が2億人を突破した。
スマートフォン(多機能携帯電話)などの電話帳データからLINE利用者を自動的に「友だち」として抽出できる。その「友だち」や登録IDを交換した相手と、短い文章やキャラクターがポーズを取る絵文字の一種「スタンプ」、画像などをやりとりできる。音声通話やゲームなどの機能もある。
メッセージは1対1だけでなく、グループに入るなどして最大100人と送受信できる。「友だち」を手軽に増やすことができるのも特徴。電話帳データからの自動抽出のほか、友だちの「グループ」に加われば、すでにグループにいる他のメンバーとは実際に会ったことがなくても「友だち」になることができる。
=2013/11/14付 西日本新聞朝刊=