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阿曽山大噴火「裁判Showへ行こう」のイメージ画像

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか) 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)「裁判狂時代」「裁判狂事件簿」(河出文庫)、「被告人、もう一歩前へ。」(ゴマブックス)、「アホバカ裁判傍聴記」(創出版)。

「身代わり依頼」の常習犯

11年12月07日 [15:08]

 今回は、先週金曜日に行なわれた青木大介被告人の裁判傍聴記。罪名は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反、犯人隠避教唆。事件の内容は、起訴時の記事から。

 廃棄物を不法に投棄した上、身代わりを立てたとして、東京地検は会社役員青木大介容疑者(31)を廃棄物処理違反と犯人隠避教唆の罪で起訴したと発表した。

 地検によると、青木容疑者は昨年11月に内装工事で出たゴミを大田区の会社敷地内に投棄し、工事を請け負った男性に身代わりを依頼。男性は警視庁に「自分が投棄した」と申し出たため、東京地検が起訴していた。

 その後、男性の弁護人が、「男性は身代わりだった」と地検に連絡し、身代わり工作が発覚したという。地検が改めて青木容疑者を逮捕していた。

 事件じゃなく、身代わりに気付かずに起訴したと報じられた1件です。記事だけ読むと身代わりを了承した理由が分からないのだが。

 起訴されたのは、昨年11月20日、被告人が大田区内の会社入口にブロック片(1.15トン)を捨てた件。もう1つは、去年の11月24日にA氏(実名報道されていないので"A"に)に身代わりを依頼した件。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は楽器屋を経営していて、犯行の約1週間後の昨年12月1日からガールズバーを経営していたらしい。

 被告人は、ガールズバー開店のため、友人の紹介でA氏に内装工事を依頼。しかし、料金が高かったので、被告人がゴミを処理して安くしてもらう約束だったという。

 ガールズバーの開店予定日が過ぎていた被告人は、内装で出たゴミを倉庫が建ち並ぶ会社の入口に投棄したとのこと。しかし、捨てたゴミの中に送り状があり、投棄された会社から電話があったという。そこで、被告人はA氏に出頭を依頼。断れば工事代金がもらえないと思ったA氏は、合意したというのが事件の詳細です。

 調べに対し、被告人は「業者に頼むと時間がかかると思った。不法投棄を軽く考えていた」と供述しているそうな。

 法廷には被告人の婚約者が情状証人として出廷し、今後の監督を約束していました。

 そして、被告人質問。まずは、弁護人から。

弁護人「なぜ、不法投棄したのですか?」
被告人「内装工事の不満があって、それがゴッチャになってこうなったんですね。工事料金が100万円もオーバーになったり、9月完成予定が11月になったり。ゴミを自分で捨てないとオープンに間に合わなくて。こっちも休まずに働いてたんで業者に連絡してるヒマなくて」

 と、身代わりになってくれたA氏に対しての不満を述べる被告人。

弁護人「ゴミを捨てられた会社に対しては?」
被告人「当時から迷惑かけたと思ってます。(昨年の)11月に警察から連絡あって、業者に処理してもらいました」
弁護人「では、なぜ身代わりを依頼したのですか?」
被告人「さっきも言ったように期間や金額を守ってくれれば、自分が捨てることはなかったと思うんです。変な話ですけど」
弁護人「当時、腹が立っていたと」
被告人「2カ月も工事が延びてガールズバーの営業できませんし、その間も女の子にお金払ってましたので」
弁護人「あと、捨てたゴミのダンボールに貼ってあったラベルに連絡先が書いてあって、不法投棄が発覚したわけだけど、A氏がラベルを剥がしていないことにも怒っていた?」
被告人「当時はそれもありました」

 当時の正直な気持ちを述べると、反省していないように聞こえてしまうんだけど、包み隠さず犯行時の心境を述べる被告人。そして、

弁護人「あなたは平成17年に無免許運転をして他の人に身代わりを依頼した件で、有罪判決を受けていますよね。またやってどう思いますか?」

 万引とかチカンとか覚せい剤とか同じ犯罪を繰り返すって、なかなか聞かない話だ。

被告人「稚拙というか、子供みたいなことして」

 と述べて質問終了。次は検察官から。

検察官「平成17年の件だけど、出頭するように依頼した相手って?」
被告人「同僚です」
検察官「ホストクラブの後輩では?」
被告人「そうです」
検察官「その後輩に落ち度があったんですか?」
被告人「落ち度というのは正確じゃないですけど、慰安旅行で沖縄に30~50人で行ってたんですけど、団体旅行で遅れるわけにはいかなかったんですけど、フニャフニャした運転をしてたんで、僕が代わって運転したんです」
検察官「結局あなたは前回も今回も立場の弱い人に罪をなすりつけてるだけでしょ?」
被告人「今回と前回を一緒にされたくないです!」

 と、声を荒らげる被告人。当然、事情はあるわけで2つの事件をアバウトに扱おうとした検察官に立腹している様子です。そして、

被告人「前回と違って、今回の件は僕がやらせてますから!」
検察官「ん?前より悪くなってるじゃないですか!」
被告人「もう懲りました」

 今回の方がより悪いんだと被告人がアピールしたところで質問終了。

 最後は裁判官から。

裁判官「警察官立ち会いでね、ゴミの業者呼んでそのときどんな気持ちでした?」
被告人「悪いとかより、熱くなっててAのせいと」
裁判官「事情訊かれたでしょ?」
被告人「引き返せないなと」
裁判官「良心ないんじゃない?」
被告人「そんなことないです。嘘の証言をしてきているの、"実は"という勇気が」
裁判官「平気で嘘をつく人についていきますかね、仕事とか、みんな」
被告人「今やってるギターショップは1000万円のギターとかもあって、信頼でやってきてる商売なんで、恥ずべきことだと思います」

 としてここから裁判官のエンジンが全開になり、一気に責めていきます。

裁判官「自分に不都合があった時、嘘を重ねると取り消せなくなる?」
被告人「はい」
裁判官「またやるんじゃないですか?」
被告人「今後はないです」
裁判官「それで冒頭の言葉かい。元々相手が悪かったと言ってるように聞こえますよ」
被告人「あ、いや、それはいきさつを知ってもらいたかっ...」
裁判官「私の言ってる意味はわかってるかね?」
被告人「わかりまさす。あの、自分が逃げて人に押し付けてるってことですよね」
裁判官「私はあなたがバカだとは思っていないよ。頭いいと思ってるんです。そのような考えを改めた方があなたのためだと思ってるんです。人の道としてね、間違った生き方をしてるんじゃないかと。そう思わないとうまくやっていけ...」
被告人「そうですね」

 と、裁判官の言葉をさえぎるように同意したところで質問終了でした。

 この後、検察官が懲役2年と罰金50万円を求刑し、弁護人が執行猶予を求める弁論をしてました。

 そして、被告人の最終陳述。

裁判官「最後に付け加えることがあったら、どうぞ述べてください」
被告人「できればの話なんですけど、裁判後に保釈して欲しいですね。1日も早く仕事することが、こんなお詫びの言葉より、謝罪になりますので」
裁判官「ん?誰に対する?」

 最終陳述なのに、異例の質問です。答えは、

被告人「社会に対して、ですね」

 と。多分、裁判官は自己中心的なものの考え方がよくないと説教してたと思うんだけどねぇ。執行猶予付きの判決はでるだろうけど、刑務所に行くかどうかギリギリの立場でこの発言は自分のことしか考えてないような...。

注目の裁判

11月11日(月)
被告人・原田隆一、鈴木孝夫、西村裕志、根本邦男(13日も)
被告人・松尾元気(初公判12日、13日、14日、15日も)
被告人・國田正春、小池幹士(初公判12日、13日、14日も)

1月12日(土)
被告人・宇田川芳隆(初公判)
被告人・横山典幸、他2人(初公判)

11月13日(水)
被告人・藤井時雄(控訴審判決)

11月14日(木)
被告人・岡宮秀夫(初公判15日)

11月15日(金)
被告人・辻本豪三、木口啓司

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