1982年の夏。27歳の会社員・タエ子(今井美樹)は、休暇を取って山形の親戚の家に農業体験に行くことに。東京で生まれ育った彼女にとって、「夏休みに田舎に遊びに行く」のは子どもの頃からの憧れだった。思い返せば小学校5年生の夏休み、「田舎に行きたい」とダダをこねてようやく連れて行ってもらったのは熱海の温泉。しかし、珍しい温泉にはしゃぎすぎてノボせてしまい、1泊の温泉旅行はあっけなく終わったのだった…。
一度開いてしまった記憶の蓋は閉まることなく、山形行きの夜行列車に乗ったタエ子に、小学5年生時代の思い出が押し寄せてきた。「廊下を走るな」「給食を残すな」というテーマで学級会が開かれたこと。父が買ってきてくれたパイナップルに大喜びしたものの食べ方がわからず、やっと口にしたその味にガッカリしたこと。隣のクラスの男の子と“すけべ横丁”に相合傘を書かれたこと。女子だけが体育館に集められて初潮についての授業を受けたこと。忘れ去っていた記憶に戸惑うタエ子だったが、小学校5年生の自分(本名陽子)が何か大切なことを教えてくれようとしているのではないかと彼女の思いに耳を傾けることに。
山形に到着したタエ子を迎えに来ていたのは、義理の兄の親戚で有機農業を始めたばかりのトシオ(柳葉敏郎)。今回の滞在で紅作りを体験させてもらうことになっていたタエ子は、その足で紅花畑へ。朝から晩まで続く、淡々とした作業。初めての体験に目を輝かせるタエ子を、山形の人々は温かく受け入れてくれた。
様々な農作業を体験したり、合間にはトシオと蔵王にドライブに行ったりと山形の生活を堪能するタエ子。そんな中でも、タエ子の“おもひで”の洪水は止まらなかった。他愛もない記憶を語り合ううち、お互いを理解し合っていくタエ子とトシオ。しかしタエ子にとってかけがえのない時間は刻々と過ぎていき…。