安倍政権の外交・安保戦略、閣僚経験者2人に聞く/神奈川
2013年11月13日
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10月の日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で、日米の防衛協力強化が盛り込まれた。政府の有識者会議では、国家安全保障戦略の策定や集団的自衛権の行使容認をめぐる論議が進む。安全保障上の課題や安倍政権の戦略をどう読むか、閣僚経験者2人に聞いた。
◆【森本敏前防衛相】日米防衛協力、緊密に
-地域の課題に関する2プラス2の成果をどう評価するか。
「2プラス2で中国に対する日米の基本的な共有認識を確認し合ったことも明確なメッセージとして意味を持つ。米国防予算の削減は予期されていたプロセスだが、米国が地域に持つプレゼンスは今後、質的・量的に下降する傾向が避けられない。同盟国としてどのような防衛協力ができるかが、日本の課題になる」
-米軍の空母機動部隊と海上自衛隊の艦隊が現場で進める連携とは。
「事態の情勢変化に基づいて、海洋に出てくる中国の海空軍に日米で対応できる共同作戦能力を向上するための訓練が緊密化する傾向になるのではないか」
-空母部隊のパトロールに海自が参加すべきという意見もある。
「今回の安保法制に関する有識者懇談会の結論待ちではないか。本来、米国同盟は日米両国のいずれかが脅威に直面した場合に日米で対応するということだから、日本の対応は集団的自衛権の行使を前提にしていなければならない。ただ懇談会の提言を受け、政府によってどのような調整が行われ、結果として政府からどういう見解が出て、それがどういう形の法律として整備されるかによる」
-集団的自衛権論議の米側の受け止めは。
「一般論として米側の姿勢は『日本が主体的に決めることだが、決めるなら同盟国として歓迎する』。ただ、米共和党の方が『行使容認が望ましい』と積極的だった。民主党はそれよりやや控えめだろう」
-対中・対韓関係は今後どう進めるべきか。
「当然のこととして日本は固有の領域を守るために防衛力を機能させる義務を負っている。不要に中国を挑発しないよう日本当局は注意しており、中国も軍は『自分たちが出て行かなければ日本は出てこない』と知っていて、最近は自制的な行動をしている。日本は中韓両国に対して常にドアを開けて待っているという姿勢でよい。日本が両国に譲るべき点はない」
「いわゆる従軍慰安婦問題は日韓基本条約によって処理済みだ。基金もつくったが、(日本の)支払いを拒否したのは韓国側。関係悪化で困惑するのは韓国ではないか。北東アジアの安定は日本との協力なくしてはやっていけない」
-厚木基地やキャンプ座間などの県内基地が米軍再編の影響を受けた。
「岩国への艦載機移転で厚木の使用頻度や実態は変わるだろうが、横須賀に空母がある限り、最低限の艦載機が入ってきて厚木を利用する状態は基本的に変わらないだろう。座間には陸上自衛隊の中央即応集団が移転して米軍と連携していくが、実動部隊のいない在日米陸軍の機能が今後上がるとは考えにくい。相模総合補給廠(しょう)は徐々に機能が減っていくのではないか」
◆【河野洋平元衆院議長】中韓首脳と会談 早く
-安倍政権の集団的自衛権の行使容認に向けた取り組みをどう見るか。
「最初に改憲と言って批判を受け、憲法96条改正も評判が悪く、そこで憲法改正によらざる解釈を変えての国策変更へと、手法を二度三度と変えてきた。国民から遊離している。解釈変更での容認には全く同意できない。米軍と一緒のときに攻撃されたら日本も撃ち返す必要があるという理屈は理解できないわけではないが、国の形を決めた憲法には戦後日本の根本となった『決して戦わない』という決意、覚悟がある。それをこうした仕掛けで変えるのは到底考えられない」
「集団的自衛権を論議する有識者懇談会も、委員の選び方が恣意(しい)的。意見が近い人を集めており、おのずから結論は見えている。国会という手順を経ないで大きな国策の変更が行われることはあってはならない」
-10月に開催された2プラス2では日米の連携強化が議題になった。
「日米関係に首相は『対等でない』という劣等感を感じているのだろうが、この議論はわれわれの先輩が国会で何十年と議論してきた。日本は基地を提供しているし、経済で米国を支えている役割を考えれば、日本が十分な貢献をしていないと思う必要もない。2プラス2の合意事項と同じぐらい重要なのは、来日したケリー国務長官とヘーゲル国防長官の2人が千鳥ケ淵(戦没者墓苑)に参拝したことだ。日本と近隣国との関係悪化に対する米国の心配を如実に示している。日本の政治に対して目に見える形で、周辺で高まりつつある緊張を緩和する解決策を示したのだろう」
-米国との関係はどう強化すべきか。
「外交とは優れた人間がやる仕事。民主党政権では日米間の人脈がなくなり、故イノウエ米上院議員がしばしば来日して『政治家同士のパイプをつくりたい』とずいぶん努力した。政権が自民に戻って修復しかけているが、昔のような状況ではない。昔の自民党では吉田茂氏から池田勇人氏、佐藤栄作氏へと流れが分かれたが、米国にすれば『極端に走らない』との信頼感があった。それに比べて今の流れには『中国とうまくやっていけないだろう』という点で米国も全幅の信頼を置けないのではないか」
-対中、対韓関係はどう改善を図るべきか。
「一日も早く首脳会談を実現させることに尽きる。首相は『対話のドアは開いている』と繰り返すが、もう一歩踏み込んだ努力をすべきではないか。もちろん努力は中国側にも求めたい。細かいことより、首脳同士でいっぺん“開会式”のような形で話し合うことが重要。韓国は大統領制だから朴槿恵(パククネ)政権は任期中ずっと続く。両国とも国家主義的な気分が高揚しているが、リーダーは中長期的な考え方をしてほしい」
米軍再編の進展合意、集団的自衛権議論も
日米両政府は東京で10月、日米外務・防衛閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開催。岸田文雄外相と小野寺五典防衛相、ケリー米国務長官とヘーゲル米国防長官が出席し、現在の防衛協力指針(ガイドライン)の再改定を来年末までに完了することで一致した。海洋進出を進める中国に国際行動規範の順守を求めるとした。
沖縄の基地問題に関しては、キャンプシュワブへの普天間飛行場移設の確認や、基地返還前の調査のため予定地立ち入りの枠組みを11月までに了解することなどで合意。県内では、厚木基地の空母艦載機を2017年ごろまでに岩国基地へ移転させることも確認した。
集団的自衛権をめぐっては、首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)で議論が重ねられている。
◆【森本敏前防衛相】日米防衛協力、緊密に
-地域の課題に関する2プラス2の成果をどう評価するか。
「2プラス2で中国に対する日米の基本的な共有認識を確認し合ったことも明確なメッセージとして意味を持つ。米国防予算の削減は予期されていたプロセスだが、米国が地域に持つプレゼンスは今後、質的・量的に下降する傾向が避けられない。同盟国としてどのような防衛協力ができるかが、日本の課題になる」
-米軍の空母機動部隊と海上自衛隊の艦隊が現場で進める連携とは。
「事態の情勢変化に基づいて、海洋に出てくる中国の海空軍に日米で対応できる共同作戦能力を向上するための訓練が緊密化する傾向になるのではないか」
-空母部隊のパトロールに海自が参加すべきという意見もある。
「今回の安保法制に関する有識者懇談会の結論待ちではないか。本来、米国同盟は日米両国のいずれかが脅威に直面した場合に日米で対応するということだから、日本の対応は集団的自衛権の行使を前提にしていなければならない。ただ懇談会の提言を受け、政府によってどのような調整が行われ、結果として政府からどういう見解が出て、それがどういう形の法律として整備されるかによる」
-集団的自衛権論議の米側の受け止めは。
「一般論として米側の姿勢は『日本が主体的に決めることだが、決めるなら同盟国として歓迎する』。ただ、米共和党の方が『行使容認が望ましい』と積極的だった。民主党はそれよりやや控えめだろう」
-対中・対韓関係は今後どう進めるべきか。
「当然のこととして日本は固有の領域を守るために防衛力を機能させる義務を負っている。不要に中国を挑発しないよう日本当局は注意しており、中国も軍は『自分たちが出て行かなければ日本は出てこない』と知っていて、最近は自制的な行動をしている。日本は中韓両国に対して常にドアを開けて待っているという姿勢でよい。日本が両国に譲るべき点はない」
「いわゆる従軍慰安婦問題は日韓基本条約によって処理済みだ。基金もつくったが、(日本の)支払いを拒否したのは韓国側。関係悪化で困惑するのは韓国ではないか。北東アジアの安定は日本との協力なくしてはやっていけない」
-厚木基地やキャンプ座間などの県内基地が米軍再編の影響を受けた。
「岩国への艦載機移転で厚木の使用頻度や実態は変わるだろうが、横須賀に空母がある限り、最低限の艦載機が入ってきて厚木を利用する状態は基本的に変わらないだろう。座間には陸上自衛隊の中央即応集団が移転して米軍と連携していくが、実動部隊のいない在日米陸軍の機能が今後上がるとは考えにくい。相模総合補給廠(しょう)は徐々に機能が減っていくのではないか」
◆【河野洋平元衆院議長】中韓首脳と会談 早く
-安倍政権の集団的自衛権の行使容認に向けた取り組みをどう見るか。
「最初に改憲と言って批判を受け、憲法96条改正も評判が悪く、そこで憲法改正によらざる解釈を変えての国策変更へと、手法を二度三度と変えてきた。国民から遊離している。解釈変更での容認には全く同意できない。米軍と一緒のときに攻撃されたら日本も撃ち返す必要があるという理屈は理解できないわけではないが、国の形を決めた憲法には戦後日本の根本となった『決して戦わない』という決意、覚悟がある。それをこうした仕掛けで変えるのは到底考えられない」
「集団的自衛権を論議する有識者懇談会も、委員の選び方が恣意(しい)的。意見が近い人を集めており、おのずから結論は見えている。国会という手順を経ないで大きな国策の変更が行われることはあってはならない」
-10月に開催された2プラス2では日米の連携強化が議題になった。
「日米関係に首相は『対等でない』という劣等感を感じているのだろうが、この議論はわれわれの先輩が国会で何十年と議論してきた。日本は基地を提供しているし、経済で米国を支えている役割を考えれば、日本が十分な貢献をしていないと思う必要もない。2プラス2の合意事項と同じぐらい重要なのは、来日したケリー国務長官とヘーゲル国防長官の2人が千鳥ケ淵(戦没者墓苑)に参拝したことだ。日本と近隣国との関係悪化に対する米国の心配を如実に示している。日本の政治に対して目に見える形で、周辺で高まりつつある緊張を緩和する解決策を示したのだろう」
-米国との関係はどう強化すべきか。
「外交とは優れた人間がやる仕事。民主党政権では日米間の人脈がなくなり、故イノウエ米上院議員がしばしば来日して『政治家同士のパイプをつくりたい』とずいぶん努力した。政権が自民に戻って修復しかけているが、昔のような状況ではない。昔の自民党では吉田茂氏から池田勇人氏、佐藤栄作氏へと流れが分かれたが、米国にすれば『極端に走らない』との信頼感があった。それに比べて今の流れには『中国とうまくやっていけないだろう』という点で米国も全幅の信頼を置けないのではないか」
-対中、対韓関係はどう改善を図るべきか。
「一日も早く首脳会談を実現させることに尽きる。首相は『対話のドアは開いている』と繰り返すが、もう一歩踏み込んだ努力をすべきではないか。もちろん努力は中国側にも求めたい。細かいことより、首脳同士でいっぺん“開会式”のような形で話し合うことが重要。韓国は大統領制だから朴槿恵(パククネ)政権は任期中ずっと続く。両国とも国家主義的な気分が高揚しているが、リーダーは中長期的な考え方をしてほしい」
米軍再編の進展合意、集団的自衛権議論も
日米両政府は東京で10月、日米外務・防衛閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)を開催。岸田文雄外相と小野寺五典防衛相、ケリー米国務長官とヘーゲル米国防長官が出席し、現在の防衛協力指針(ガイドライン)の再改定を来年末までに完了することで一致した。海洋進出を進める中国に国際行動規範の順守を求めるとした。
沖縄の基地問題に関しては、キャンプシュワブへの普天間飛行場移設の確認や、基地返還前の調査のため予定地立ち入りの枠組みを11月までに了解することなどで合意。県内では、厚木基地の空母艦載機を2017年ごろまでに岩国基地へ移転させることも確認した。
集団的自衛権をめぐっては、首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)で議論が重ねられている。
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