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復興提言で「帰還困難区域外の支援も」
11月13日 17時2分

原発事故からの復興に向けて与党の提言をまとめた自民党の大島前副総裁は、福島県郡山市で、避難指示が出ている地域の市町村長らと会談し、「帰還困難区域」の住民が転居する場合の支援策を検討する考えを伝えたのに対し、地元側からは、ほかの区域の住民への支援にも力を入れるよう求める意見が出されました。

自民党の東日本大震災復興加速化本部長を務める大島前副総裁や、公明党の若松復興・防災部会長代理らが、13日、福島県郡山市を訪れ、東京電力福島第一原子力発電所の事故で避難指示が出ている地域の市町村長らと会談しました。
この中で大島氏らは、原発事故からの復興に向けて与党としてまとめた提言について、長期にわたって帰還が難しいとされる「帰還困難区域」の住民が転居する場合の賠償などを年内に示すほか、住民が将来帰還するかどうかを判断する材料として、除染の効果や帰還できる時期の見通しを明確に示すよう政府に求めていることなどを説明しました。
これに対し市町村長らからは、「帰還できる時期の見通しを明確にするとしている点などは評価できる」という意見が出された一方で、「『帰還困難区域』以外でも仕事や子育てを理由に転居せざるをえない住民がおり、そうした人への支援も必要だ」という指摘や、「帰還するかしないかの二者択一ではなく当分の間だけ転居するというケースもあり、きめ細かな支援を検討してほしい」といった要望が出されました。
また、与党の提言で「除染は当面、帰還可能な区域を優先する」としていることに対し、「除染を行わない地域が出るのではないかという不安があるので、住民に丁寧に説明すべきだ」という意見も出されました。
大島氏は、「被災者を分断する考えはない。除染の進め方や放射線の影響は、今後専門家によるチームが丁寧に説明するようにしたい」と述べ、提言への理解を求めました。
大島氏は会談のあと記者団に対し、「提言について『一歩踏み出した』と、おおむね評価をいただいた。被災者や被災地を『分断』するのではないかという懸念が出されたが、そういうことは全くない。まさに一人一人が今後の生活を判断できるような環境を作るというのが提言の趣旨だ」と述べました。

首長からは評価と不安の声

提言について説明を受けた避難区域の自治体のうち、長期にわたって帰還が難しいとされる「帰還困難区域」を抱える町長や村長からは、住民の生活再建に向けて評価する声があった一方で、今後の除染や賠償などに不安を訴える声も出ました。
福島第一原発が立地し、町の人口の96%が帰還困難区域になっている大熊町の渡辺利綱町長は、「これまで問題を先送りにしていたが、帰還困難区域の住民たちに一定の期間は帰ることができないといった踏み込んだ内容もあり、住民からも帰還について早く示してほしいという意見があったので、その点は評価したい。住民からは除染や賠償を打ち切られるのではないかという不安の声が上がっているので、その点は町としてもしっかり説明していきたい」と話しました。
また、大熊町と同じように人口の96%が帰還困難区域になっている双葉町の伊澤史朗町長は、「生活の再建に向けて、各自治体はそれぞれ問題点を抱えているが、今回の提言は生活再建という面でかなり前進したものだと受け止めている」と評価したうえで、「帰還困難地域で戻りたいと思っている人もいれば、居住可能とされる地域で戻らないと決断している人もいるので、こうした人たちの支援も引き続き求めていきたい」と述べました。
一方、町の大部分が帰還困難区域になっている浪江町の馬場有町長は、「地域によって実情が違うし、問題意識が異なるなか、具体性に欠けていると言わざるをえない」と指摘したうえで、「大島前副総裁から『町が分断されたという感覚を持たないように取り組む』という話があったが、町が分断されることがないよう、賠償問題も含め適切な対応を取っていただきたい」と述べました。
さらに、今後帰還できるかできないか判断する際の考え方について、「地域のつながりを大切にするという観点から、浪江町ではものごとを決めるときは『大字』単位で行ってきた。そうした地域のつながりも重視して対応してほしいし、居住が可能とされる地域にも放射線量が高いところもあるので、判断は慎重に対応するように伝えた」と話しました。
また、村の一部が帰還困難区域になっている飯舘村の菅野典雄村長は、「詰めた話があり、われわれも問題提起ができたので、前進があったと思う。提言を出すにあたっては、村に帰る人、帰らない人それぞれに対する具体的な施策を作り、まず国の謝罪があるべきではないか」と指摘しました。
そのうえで「これからさらに分断が進まないか、除染の費用を減らすような方針になってしまわないか、監視していきたい」と述べました。
福島第二原発があり、町の人口の3分の1が帰還困難区域になっている富岡町の宮本皓一町長は、「提言についてはおおむね理解をした」と述べたうえで、帰還をせずに新しい土地で生活再建を選ぶという考え方については、「住民の分断につながるのではないかと言わせていただいた。国としては一人一人の考え方を尊重するという話だが、分断が生まれるという町民からの批判も考えられる」と話しました。
また今後の双葉郡の在り方について、「国が定めるものばかりではなく、当然、私たちが一緒になって考えていかなければならないと提言した」と述べました。

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