東日本大震災

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知事「移住支援」提言容認 帰還の方針は維持

佐藤知事に与党復興加速化本部の提言書を手渡す大島本部長(右)

 東京電力福島第一原発事故からの復興に向けた自民、公明両党の第三次提言について、佐藤雄平知事は12日、「全員帰還」を原則としてきた政府の避難者対策に、新たに帰還困難者の移住支援が盛り込まれたことを容認する考えを明らかにした。自民党の東日本大震災復興加速化本部の大島理森本部長と県庁で懇談後、記者団に語った。将来的には住民帰還を目指す姿勢を維持しながらも、移住支援による生活再建という提言の「現実路線」に理解を示した。
 佐藤知事と大島本部長の懇談は冒頭以外、非公開で行われた。懇談を終えた佐藤知事は、移住支援が明確に盛り込まれた提言について、「避難が長期化する中で、(帰還に関する)避難者アンケートの意向が違ってきている。将来的に帰還を目指す県の方針は変わらないが、住民の意見を聞き、意向に添える対応、施策を進めてほしい」と語り、移住支援を選択肢として明確に打ち出す必要性を認めた。
 一方、大島本部長との会談では「最終的には避難者が古里に帰還を果たせるよう県として取り組む覚悟なので、支援をお願いしたい」と述べ、将来的な住民帰還への環境整備を引き続き要望した。
 提言は、14万人超の避難者について早期帰還の促進を目指す一方で、放射線量が高く帰還が困難な区域については「今後、何年間帰還できないか明確にすべき」と指摘。新しい生活を選択するために必要な判断材料を国と自治体が提示する責任があるとしている。
 提言の実現には課題もある。移住支援は基本的に帰還困難区域を想定しているが、同区域以外にも局所的に放射線量が高かったり、住環境が荒廃したりして帰還を断念せざるを得ない避難者は少なくないとみられ、移住支援の対象範囲の捉え方が焦点の一つになる。
 さらに、移住支援策にどれだけ県や市町村、住民の意見を反映させ、実効性のある対策を示せるかも不透明だ。避難者に帰還か、移住かの選択肢を平等に提示するには、早期帰還者への支援策のさらなる強化も求められる。

■全基廃炉など盛り込み要望
 大島本部長との懇談で、佐藤知事は県内原発の全基廃炉、除染の長期目標などを提言に盛り込むよう要望した。
 要望では(1)国が主体性を持って廃炉・汚染水対策に取り組むこと(2)県民の総意である全基廃炉の実現(3)国による線量基準の説明責任(4)除染の長期目標である追加被ばく線量1ミリシーベルトの堅持(5)十分な損害賠償の実施-を求めた。
 提言の骨子を説明した大島氏は「国がもう一歩前進し、新たな加速化へのスタートにしたい」と述べた。

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