IEA:日本の電力価格、将来は米国の約2倍 競争力失う
毎日新聞 2013年11月12日 21時04分
【ロンドン坂井隆之】国際エネルギー機関(IEA)は12日、2035年までの国際的なエネルギー情勢について分析する「世界エネルギー展望2013」を発表した。新興国の使用量の増加で、原油価格は現在の1バレル=110ドル程度から128ドルまで上昇すると予測。日本は米国に比べ、電力価格が約2倍に高止まりする結果、鉄鋼や化学などエネルギー集約型産業で輸出の世界シェアの約4割を失うとの厳しい見通しを示した。
現在、日本が輸入する天然ガスの価格は、シェールガスの国内開発が進む米国の約5倍になっており、これを反映して電力価格の差はほぼ3倍に広がっている。IEAは、米国からの安価な天然ガス輸入などによって電力価格差は縮小に向かうものの、35年時点でなお2倍の差が残ると分析した。また、再生可能エネルギー支援のコストを料金に上乗せしている欧州でも、電力価格は米国の2倍となると予測。この結果、エネルギー集約産業の輸出シェアは日本(現在7%)が約4割、欧州(同36%)が約3割それぞれ低下し、米国と新興国に移行していくとした。
世界のエネルギー需給見通しでは、中国が30年に米国を抜いて世界最大の石油消費国となるなど、新興国のエネルギー使用量が世界の需要を約3割押し上げる。再生可能エネルギーによる世界の発電量は世界全体の30%を超えるまで増加するものの、化石燃料の需要も増え続ける結果、エネルギー使用に伴う二酸化炭素排出量は35年までに20%増加。世界の平均気温が3.6度上昇する深刻な温暖化を迎えるとの見方を示した。
これらを受け、IEAは日欧に対して▽省エネルギーの推進▽天然ガスの購入先や期間を固定する現在の契約方式を改め、調達先を多様化▽再生可能エネルギー、原子力を含めた自国のエネルギー源開発促進−−を提言。再生エネルギーへの政府補助は電気料金の負担を過度に増やさないよう慎重に検討することも求めた。また、「経済成長を損なわずにCO2排出量増加に歯止めをかけることは可能」とした上で、新興国などに対して▽石炭火力発電の制限▽原油・天然ガス田で放出されるメタンガスの最小化▽ガソリン購入補助金などの見直し−−などの実行を要求した。