8回、本塁打を放った伊藤隼と阪神・高代コーチ=東部野球場(撮影・鳥越瑞絵)【拡大】
聖地と酷似した右翼から左翼方向への強風に白球が乗った。ただ、それ以上に来季にかける強い決意が乗り移っていた。伊藤隼が進化を示す左越えの放物線を描いた。
「風ですけどね。でも、強い打球を打てたことはよかった。3打席目までは、体が開くのが早かった。そこを修正しようと思って、4打席目は逆方向をイメージしていました。自分のなかで修正できたことは、収穫だと思います」
納得の「浜風打法」は1点リードの八回一死から。5番手・森本の外角高めの直球を一閃。打球は高々と上空を舞い、左翼フェンスを越えた。10月28日のフェニックスリーグ最終戦に続く2戦連続のアーチ。1、2軍の公式戦通算8本塁打(1軍で2本)はすべて右中間から右翼だ。つまり、逆方向に狙った一撃こそが、成長の証しだった。
背番号「51」が今キャンプでテーマに置くのが「逆方向にいい打球が打てるか」。理由は「いいバットの出方をしている」という認識があるから。掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター=DC=の徹底指導のもと、ボールの見極めをよくするためにインパクト時に左肩を下げる癖を直し、両肩を平行に回すフォームに改良を続ける。同時に「相手の投球に合わさず、自分のいい形で打てるか」を説かれてきた。この日の本塁打はゲームの中で工夫をこらし、理想の打撃に執着した結果だった。