リストランテ アルポルト 片岡 宏之 氏 - ふるさと応援シェフに聞く -
出身地から、ゆかりの土地、思い出の場所まで、テーマは"ふるさと"の食。シェフの思いやこだわりの味について伺った。
リストランテ アルポルト
- 東京都港区西麻布3-24-9
http://r.gnavi.co.jp/g004300/
- 片岡 宏之 氏
- 1982年、「リストランテ アルポルト」オーナーシェフ片岡護氏の長男として東京都港区に生まれる。東京駅の「ドン アルポルト」勤務を経て2006年に1年間イタリア留学。2009年より「リストランテ アルポルト」勤務。現在はメイン料理を担当。
東京と福岡の食文化に触れることで
料理への興味と味覚を養った
私が生まれ育った東京都港区は、各国の大使館が集まっていて、外国人の方々も多く住む地域です。子供の頃に両親に連れられてよく行っていたのが、大使館員や外国人ビジネスマン御用達のスーパーマーケット「ナショナル麻布」。普通のスーパーでは売っていない世界各国のチーズやワイン、フルーツ、七面鳥などがズラリと並んでいて、子供心にワクワクしたのを覚えています。
父はイタリアンのシェフですが、家では和食がメインの食卓でした。特に、福岡県出身の母が作ってくれる「がめ煮」(筑前煮)は私の大好物。母の実家がある直方(のおがた)市に遊びに行くと、海藻(エゴノリ)を固めて短冊状に切って食べる「おきうと」や、生のサバをすりゴマとワサビ醤油で和える「胡麻鯖(ごまさば)」など、東京ではなかなか食べられない福岡ならではの伝統料理が出てきたことが、とても印象に残っています。
母の実家近くにはぶどう畑があって、子どもの頃から巨峰やキャンベルなどをよく食べていました。今でも毎年、親戚から旬の巨峰が山のように届くので、店で出すデザートにいろいろとアレンジして使っています。
国内外の多彩な食材が手に入る東京都港区と、豊かな郷土料理が味わえる福岡。2つの地域の食文化を体験したおかげで、幼い頃から様々な食材や料理に触れ、食への飽くなき探求心と、自分の味覚への自信を自然に身に付けることができました。今は、少しでも自分の理想とする「おいしさ」に近づけるように、日々修業中です。
イタリアンは素材が命なので、おいしい食材を届けてくれる全国の生産者の皆さんには感謝の言葉しかありません。いずれは直接、現地に出かけて生産者の方々とコミュニケーションを図り、知られざる名産・特産を店のメニュー作りに活かしていきたいですね。